普通の焼肉店と思ったら…まさかのジオラマ! 「焼肉 山ちゃん」営む一家と制作者のすてきな物語
ジオラマの製作をスタート、50年の歴史を再現ために試行錯誤する日々
制作は、2022年7月に始まりました。店舗を詳細に観察し、開店前の静かな時間に店を訪れて寸法を測定。多数の写真を撮影し、その資料をもとにジオラマの設計を行います。ジオラマには木材やスチレンボードが使われ、窓ガラスは透明プラスチックを使用しました。 特に気を使ったのは、歴史を感じさせる店の風合い。燻された壁の質感や傷、少し錆びた鉄の部分、使い込まれた道具類など忠実に再現することを目指しました。 2023年1月、店舗は改装のため休業となりましたが、その間も東さんは製作を続けます。 東さんは、店内の小物にもこだわりました。ガスロースターや食器、家具までも細かく再現。3DCADで設計したあと、3Dプリンターで立体化して塗装を施すという高度な技術が駆使されました。「ガスロースターにはLEDライトを組み込んで炎を表現し、見て楽しめる工夫もしています」と、語っています。 そうして製作を始めてから約10カ月後の2023年4月、「焼肉 山ちゃん」のジオラマが完成しました。
晴れて「焼肉 山ちゃん」に寄贈されたジオラマ、お店の人たちの反応は?
ジオラマは同年9月に静岡県浜松市で開催された『浜松ジオラマグランプリ』で審査員賞を受賞。さらに和歌山県での『くどやま芸術祭』にも招待され、多くの人にジオラマを披露する機会を得ました。 その後、ジオラマは新装開店した「焼肉 山ちゃん」へ寄贈され、店内に飾られることになりました。当日は、おばあちゃんをはじめ親戚の方々が集まり、ジオラマを囲んで旧店舗の思い出話に花を咲かせたそうです。 「そっくりやわぁ~」とおばあちゃんはとても驚いた様子。「壁もネチャネチャな感じに汚しといたよ」と伝えると笑っていたそうです。「おばあちゃんは、店の前にあったドアが壊れたプロパンガス庫をとても気に入っているようです」とのこと。こうして東さんとおばあちゃんとの約束は果たされました。 「おばあちゃんはもちろん、親戚のみなさんもよろこんでくださり、本当に作って良かったと思いました。私のジオラマがこれほどまで感動してもらえるのだと思い、私もまた感動しています」と語る東さん。またひとつ、「焼肉 山ちゃん」との思い出が増えたようです。