全英チャート8位、日本人兄弟バンドが追求する「本物のロック」 長い下積み経て、憧れの地ロンドンで花咲かす
富山市出身の兄弟ロックバンド「SAHAJi(サハジ)」が1月、ロックの本場イギリスのCDチャートで8位を獲得した。デビュー曲「Future In The Sky」が多くの人の心をつかみ、ビートルズの新曲やアリアナ・グランデのヒット曲がトップ10に居並ぶ中での快挙だった。メンバーでボーカルとギターの西田蕉太郎(にしだ・しょうたろう)さん(34)と、ギターの曜志朗(ようしろう)さん(32)は長い下積みを経て2022年から拠点としたロンドンで飛躍。憧れの地で本物を追求する。(共同通信=堤悠平) 【写真】「つないできたフェスの灯を、ここで消すわけにはいかない」 4億円の赤字を全額負担…それでも「音楽フェス」にこだわるわけ つてもノウハウもなく、周囲からは「不可能だ」といわれた挑戦 ロッキン移転後の茨城で6万人を集めた戦略とは
▽20年前に作った曲がチャートイン「夢が叶った」 「これは本当に日本人が歌っている曲なのか?」SAHAJiの「Future In The Sky」を聞いた人の多くがそんな印象を持つに違いない。どこか懐かしい広がりのあるメロディで歌われる、未来への希望と空に突き抜けていくような演奏。メロディは1990年代に活躍したイギリスのバンド「オアシス」を強く思い出させる。しかしギターソロは1970年代のアメリカン・ロックのよう。これまでのロックのエッセンスを取り込みながら、彼ら自身にしかできない表現に成功している。 「Future In The Sky」はSAHAJiの2人が中学生のときに書いた。この曲でイギリスでのデビューを飾り、チャートインの連絡を聞いたのは2024年1月下旬。イギリスでライブのリハーサルをしているときだった。「チャートに入ればいいね、って話して、なんとなくそわそわしていた」と2人は振り返る。「8位だぞ!」スタッフがステージの2人に叫んだ。涙が流れ、「『マジ!?信じられない』って感じだった」。2人の夢が叶った瞬間だった。 ▽「英語で本物のロックを歌う」その理由
「3歳か4歳のころには音楽で食っていくって決めてたね」。蕉太郎さんはそう話す。音楽好きの両親の影響で音楽に囲まれて育ち、物心がついたときにはすでに楽器を手にしていたという。 初めて夢中になったのは、1960年代から活動するアメリカのジャムバンド「グレイトフル・デッド」。2人は小学生のときに、家族で組んでいたバンドを発展させてSAHAJiを結成。サンスクリット語で「自然に育つ」という意味だ。その頃から地元・富山で路上ライブを重ね、投げ銭で機材をそろえた。 彼らの運命を決定づけたのは中学生のときにあった。1990年代に世界を席巻したイギリスのバンド「オアシス」との出会いだ。そのときの衝撃を蕉太郎さんは鮮明に覚えている。「普段着で、めちゃくちゃかっこいい声でめちゃくちゃかっこいい歌を歌う。『これでいいんだ』って俺も認められた気がした」。彼らもまた、兄弟ロックバンド。運命めいたものを感じた。「英語で歌う本物のロック」という、彼らの目標はこのとき定まった。