全英チャート8位、日本人兄弟バンドが追求する「本物のロック」 長い下積み経て、憧れの地ロンドンで花咲かす
高校生のときには東京の音楽レーベルと3年間の育成契約を結び、上京した。しかし、レーベルから求められるのは日本語の歌。自分たちが追求する「英語で歌う本物のロック」とは遠いものだった。 ▽オアシスのエンジニアとの出会いが転機に レーベルとの契約後は富山に戻り、CM音楽制作やライブハウスなどで地道な活動を続けた。しかし展望が開けない活動のなかで、兄弟の間では衝突も。2020年のクリスマスには大げんか。1年間、口をきかなかった。「解散寸前だった」と振り返る。 その間、蕉太郎さんはバンド活動の突破口を探すために渡英。交流サイト(SNS)でも、音楽関係者に片っ端から連絡を取った。そのとき、バンドのSNSをフォローしている人物に気がついた。ニック・ブラインさんというイギリスの音楽エンジニアで、オアシスのアルバム・レコーディングを手がけたことで有名な人物だ。彼にもダイレクトメッセージを送り、スタジオで会うことに。
曜志朗さんもイギリスに呼び寄せ、2人で「Future In The Sky」を演奏。「ニックは泣いているように見えた」と2人。「あなたのプロデュースでこの曲を出したいんだ」と直談判し、ニックさんのレーベルと契約を結んだ。同時に2人は拠点をロンドンに。大きなチャンスをつかんだ瞬間だった。 ▽イギリスツアーの洗礼と手応え 今年6月から7月にかけて、全英約11カ所を回るツアーを敢行。オアシスの地元マンチェスターでは、オアシスのギターなどを一堂に集めた展覧会に呼ばれて演奏し、1曲目で「最高!」と観客が拳を突き上げた。訪れる先々で声をかけられ、口コミで足を運ぶ人々も増えていった。「自分たちの音楽が受け入れられている」。そう実感する日々だった。 しかし、楽しいことばかりではなかった。レーベルとの契約はあるものの、渡航費や現地での費用はすべて自前。移動は電車や、現地のバンドメンバーの車だ。「バンドメンバーから『明日2時に迎えに行くよ』って連絡が来ても、その時間には絶対来ない。数時間は平気で遅れる(笑)」と蕉太郎さん。ライブの前に行うサウンドチェックは、定刻に準備が整っていないこともしばしば。現地の口座を持っていないためキャッシュレスでグッズを売れず、現金でお願いすることも常だったという。