全英チャート8位、日本人兄弟バンドが追求する「本物のロック」 長い下積み経て、憧れの地ロンドンで花咲かす
それでも「やってよかった」と2人は満足げだ。「移動が大変というのも、イギリスの人が時間にルーズだってことも、キャッシュレスで売れないことも、全部自分たちでやってみないとわからないことだった。俺たちが憧れるミュージシャンもみな通って来た道だと思うと、全然苦じゃなかった」。2人は口をそろえる。「憧れの存在にひとつひとつ近づいていっている」 ▽凱旋 イギリスツアーを経た彼らが8月、地元・富山で凱旋ライブを行った。彼らにとって富山はどんな存在なのか。「富山は、いつも俺たちを助けてくれる場所。1月には大きな地震があった。傷つき、悲しんでいる人たちに俺たちの曲を聴いてもらって、元気になってほしい」 8月24日夜、会場となるカフェは全国から集まったファン約80人の熱気で満ちていた。定刻の午後7時を迎えると「サハジ!サハジ!」のコールがどこからともなく起こり、観客をかきわけて2人が登場。早くも観客の興奮は最高潮だ。この日はベースやドラムも加えたバンド編成。1曲目、「Don‘t Touch My Soul」。爆音をかきならす2人のギターに、内臓に響くベースとドラムが絡み、前のめりなグルーヴが観客を圧倒する。
中盤は2人だけのアコースティックセット。エリック・クラプトンの「Change The World」やトム・ペティなどのカバー曲を交え、しっとりと聞かせる。なかでも「トリックのない愛」は、育成契約時代に作ったという日本語詞の1曲。「これは10年ぶりぐらいにやるんじゃないかな。地元だから特別にね」と蕉太郎さんは観客に紹介した。彼らの裾野の広さを感じさせる曲だ。 この日のハイライトは、9月のリリースを発表し演奏された新曲の「Stay Around」。「これまでになくポップ」と彼らが語るこの曲は、突き抜けるような明るいメロディを持つ。観客も早くも声を合わせて歌い、次なる名曲を予感させる。 「Future In The Sky」はアンコール前最後の1曲。蕉太郎さんが「前の人は座ってくれよ。後ろの人にも見せたいんだ」と語りかけ、観客はかみしめるように、大空に広がるようなメロディに耳を傾けた。