こうして親子の間にどんどん溝ができていく…いたって普通の家庭で愛着の問題を抱える子が育つ深刻な理由
■甘えることができなくなった 親や周囲の大人からほめられたことがきっかけで愛着サイクルを止めてしまう子もいます。 たとえば下の子が生まれて忙しいとき、上の子が世話をしてくれると親は「さすがお姉ちゃんね」などと、ほめることがあります。上の子はまだ幼く、本当は弟や妹のように親に甘えたいのに「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんだから」と言われると、甘えられなくなってしまいます。 また、家族に病人がいて、小さいときから家事やケアを担っている子もこのタイプで、現在はヤングケアラーとして問題化しています。 「しっかりしてるね」「強いね」という親のほめ言葉は、「あなたはもう甘えなくていいわね」というサインにもなります。サインを受けとった子どもは自ら「甘えたい」という本音に蓋をしてしまいます。 ほめられることで自立を意識するようになった子は、じゅうぶんな安定感や安全基地がつくられる前に愛着サイクルを止めてしまいます。 ■発見が遅れるヤングケアラー 病気の家族の介護や家事を過度にまかされている子をヤングケアラーと呼びます。子どもらしい遊びや学習時間、睡眠や将来の夢など自分の人生を犠牲にしているのに、家族には「よくお手伝いする良い子」とほめられ、本人も「自分がやらないと」と思い込んでいるので、学校の先生も周囲の大人も気づかず発見が遅れてしまいます。 ■「タイパ」が子どもの成長を急かす 現代はスピードが重視される時代です。「タイパ」という言葉が流行るように、誰もが時間をかけず効率よくものごとを片づけようとしています。子どもの心の成長にもその影響が出ているように思えます。 共働きの両親と核家族が増えたせいなのでしょうか、家事や育児にも時間や気持ちの余裕がなくなってきています。ますます子どもも「早く大人になってほしい」と成長を急かす親御さんが増えた印象です。仕事や家事を効率化するのは合理的かもしれませんが、子どもの成長は違います。数十年やそこらで人間の成長スピードが変わるはずもなく、子どもの心も体も一人前に成長するには、急かされない環境で、ゆったりとした時間が必要です。