トヨタ・マツダ・スバル「新エンジン開発」の真意、マルチパスウェイに込められた各社の戦略
■技術的ブレークスルーの可能性 気になるのはショートストローク化のレシピである。一般的にロングストロークのほうがエンジン内部のフリクションが少なく、また空気と燃料が混ざるための時間を稼げることから燃焼効率も高めやすい。いったいどんな技術で、これを実現しているのかについてプレゼンテーションを行った中嶋裕樹・取締役副社長CTOは明言を避けたが、間違いなく何らかの技術的ブレークスルーがあったはずだ。 ちなみに構造上、やはりショートストロークになるスバルの水平対向エンジンも、悩みは一緒である。実際、両社はこうした共通課題について、オープンに議論を行っているという。今回、3社が揃ってこうした発表を行ったのは、普段からの良好な関係性に拠るものなのである。
マツダが披露したのはロータリーエンジンを組み合わせた2種類のハイブリッドシステムだ。そのうちひとつはすでに1ローターエンジンを発電専用に使ったもので、「MX-30 Rotary-EV」のものよりコンパクト化を図っているという。そしてもうひとつは縦置き2ローターシステム。モビリティショー2023でお披露目したスポーツカー「ICONIC SP」が想定していたのは、このシステムと見ることができそうだ。
ロータリーはサイズが小さく、軽く、高出力。補機類のレイアウトの自由度が大きいこともあり、革新的なパッケージングを実現できるポテンシャルが高い。一方で燃費が常に課題としてつきまとってきたのも事実だ。 それについて質問したところ中井英二・執行役員パワートレイン開発・技術研究所担当から「確かにロータリーエンジンの燃費は良くないが、パッケージングのメリットをうまく活かせば、それを十分相殺できると期待している」という率直な答えが返ってきた。実際、2ローターシステムの全高は非常に低く、これならフード高を下げて空力性能の大幅な向上が可能になる。