トヨタ・マツダ・スバル「新エンジン開発」の真意、マルチパスウェイに込められた各社の戦略
トヨタが考えているのは、従来のように内燃エンジン車を起点に電動車を考えるのではなく、その逆。こうしたパッケージングなどのメリットを最大限に活かしながら、航続距離や充電インフラ不足といったBEVの弱点を、内燃エンジンで補うクルマである。そのためには電動ユニットとの組み合わせを前提に、BEV用の車体にも搭載できる小型エンジンが必要だ、というロジックだ。 ■新エンジンでは大幅な小型化を実現 そんな背景から開発されているエンジンは1.5Lの自然吸気とターボ、そして2.0Lターボの3種類の直列4気筒ユニットである。いずれもショートストローク化によって全高を抑えており、1.5L自然吸気エンジンは既存の直列3気筒1.5Lに対して体積、全高をそれぞれ10%低減。1.5Lターボは同等の出力となる現行2.5Lに対して、やはり体積を20%、全高を15%も低減している。
会場には現行「プリウス」の1.8Lエンジンを、この新型1.5Lに置き換えたモデルも置かれており、見ればどれだけエンジン高が下がるか、つまりボンネットを低くできるかは一目瞭然だった。LF-ZCの極端に短く、低いボンネット内にも、確かにこれなら収まるかもしれない。 実はエンジン単体で使うことも排除されてはいない。将来、エネルギーが電気と水素に収斂したならば、電気はBEVに使い、水素はそのまま燃焼させて、もしくはCO₂と結合させてe-フューエルにして、内燃エンジンに使えばカーボンニュートラルへの道が容易になるとトヨタは見ている。新車の20倍とも言われる現保有車の存在を考えれば、この道も重要だ。
この日に先立って筆者は、この新型エンジンのうち2.0Lターボ仕様を載せたテスト車両2台を運転することができた。1台は「レクサスIS」に積まれたものでスペックは最高出力400PS、最大トルク500Nm級。もう1台はピックアップで、同300PS、400Nm級のスペックに新型6速MTを組み合わせていた。 短時間の試乗でも、前者のアクセル操作に対するツキの良さと高回転域の伸びの良さ、後者の豊かなトルク感は十分に実感できた。実際、1台のエンジンでスポーティセダンからピックアップまでカバーする適応力を持っているわけだが、実はバックヤードにはモータースポーツユースまで意識した600PS級の仕様も展示されていた。