トヨタ・マツダ・スバル「新エンジン開発」の真意、マルチパスウェイに込められた各社の戦略
2030年にはBEV比率を50%まで高めると宣言しているスバル。言い方を変えれば、その時点でも50%はHEVやPHEVなどの内燃エンジンを使うことになるが、もちろんそれは今のままというわけにはいかない。では、どうするか。 展示していたのは、近日登場予定の「クロストレック ハイブリッド」だった。このクルマが象徴していたのは、今後も伝統の水平対向エンジン、そしてシンメトリカル(左右対称レイアウトの)AWDを使っていくということだ。コンパクトで特に前後長の短い水平対向エンジンも組み合わされるハイブリッドシステムはトヨタから供給されるTHS(トヨタハイブリッドシステム)である。
冷静に考えれば、水平対向エンジンは熱効率にハンディがあり燃費向上が難しく、ドライブシャフトで後輪に駆動力を伝えるAWDは、e-アクスルを使った電動AWDに効率性で敵わない。 ■新しい水平対向エンジンの開発も視野に 藤貫哲郎・取締役専務執行役員CTOによれば「しかし、これらアイデンティティを手放しても、スバルはスバルらしくいられるのか。商品は独自性、エモーションという部分も考慮しなければならない」と考えたときに、答えは決まったという。このハイブリッドシステムは今秋発売の新型フォレスターにも搭載される。
さらに将来に向けては、新しい水平対向エンジンの開発も視野に入れているという。冷間始動時の燃費悪化に繋がっているエンジンの暖まりの遅さは、例えば大容量のバッテリーを積んでいれば、その電力を使ったプレヒーティングなども考えられる。電動化で欠点をうまく潰せば、サイズが小さくエンジン回転が滑らか、シンメトリカルAWDを低コストに構築できる水平対向エンジンには、まだ勝機がある。スバルはそう踏んでいるのである。
続いてはトヨタ。発表したのは大幅なコンパクト化を図った直列4気筒ガソリンエンジンだが、驚いたのは会場に、すでにそのエンジン自体が展示されていたことだ。 コンセプトは、BEVを起点にPHEV、HEVを考えた際に必要な内燃エンジン。例えばBEVにおいては、薄型バッテリーや小型化した空調ユニットなどを使い、BEV最適設計を推し進めれば、フードが低くスタイリッシュなクルマを作りやすくなる。昨年の「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(モビリティショー2023)」でお披露目された「レクサスLF-ZC」が、まさにその具現化された姿だ。