ウクライナ問題 プーチンが沈黙しても解決せず 上智大・上野教授に聞く
東西の架け橋目指せ
国境線を引き直したとしても民族問題は解決しない。暫定政権がクリミアを切り捨て、EU加盟をやみくもに目指せば、現実問題として軋轢が生じる。結局、ウクライナは現状の国境線を維持し、多文化共生のなかで国民国家形成を目指すしかないだろう。 ウクライナには「東西の架け橋」という国家としてのアイデンティティがある。つまり、ロシア人とウクライナ人の混合国家であるからこそ、東西の緩衝地帯になり得る。歴史的にも文化的にも異なるヨーロッパとロシアの間で、ウクライナが緩衝地帯として機能することは、国際社会にとっても望ましい。 ロシアにとってもEUやアメリカを全て敵に回すメリットはない。プーチン大統領も落としどころはわかっているはずだ。ロシアとしてはウクライナが現在の国境線を維持する場合、ロシア系住民の安全と権利を最低限要求することになるだろう。 ---------- 上野俊彦(うえの・としひこ) 上智大学外国語学部ロシア語学科教授。1953年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。政府系研究機関、在ロシア日本大使館などでの勤務を経て現職。専門はロシア・ソ連政治史。「ポスト共産主義ロシアの政治―エリツィンからプーチンへ」(日本国際問題研究所)など著作も多い。最新刊は「ロシア近代化の政治経済学」(共著・文理閣)。