映画『ブルーピリオド』原作者・山口つばさ&主演・眞栄田郷敦インタビュー。「好き」に向かう苦楽とは
キャラクターが「生きている」。原作者も唸った細部へのこだわりとは?
―山口先生、実写映画化のお話が来たときには、どのように思われましたか。 山口:実写化のお話がきたときは、単純にとてもうれしくて。でも、(映画化する範囲である)6巻までってちょっと長いし、かつ受験編って、そんなに出てこないわりに重要なキャラクターがすごく多いんですよね。だから2時間におさめるのが難しそうだな、と思っていたのですが、すべてを取りこぼさないように真摯につくってくださった印象がありました。 漫画だと描けない部分や、描いていて気づかなかった部分もありました。映画の最初のほうで、渋谷駅の井の頭線から出たあたりを八虎が歩いているところとか「ああたしかに!渋谷で遊ぶならそこを通るよね」みたいな。あそこまで想像していなかったので。より生きている感じというか――映っていないところでも、キャラクターがいろんな動きをしているんだな、と感じられてうれしかったですね。 ―実際に映画を見られて、他にも印象的だったり、気づいたりしたことはありましたか? 山口:私は日常的な要素を入れるのが苦手で、あんまり描けていなかったんですけど、(映画で)美術部の子たちがみんなで流しそうめんをしているシーンがあって、それはうれしかったですね。 それと個人的に、本人たちの記憶にはすごく残っているけれど、他人からしたら本当に日常のいち風景でしかない――みたいなものに、めっちゃ「エモ」を感じちゃうんです。映画で八虎と龍二くんが水族館に行く場面があり、それがセリフがなくても象徴的なシーンになっていて、そういった「エモ」を感じてよかったです。「エモ」っていうと軽く聞こえてしまうのですが、思い出とかって、そういうもんだと思うんですよね。 ―眞栄田さん演じる八虎については、どういうふうに感じられましたか? 山口:私は、八虎くんってずるいとこもあるし、もっとヘラヘラしているところもあるように感じていました。眞栄田さんの八虎くんの方が「実直にガチで美術やりたいんだな」という印象を受けました(笑)。 良くも悪くも、漫画のキャラクターだから少し誇張して描きもするのですが、眞栄田さんの八虎くんは、本当に予備校にいる感というか、それでいてギンギンの金髪だからそこで少し浮いてそうな感じ、でもとても頑張っている感じで――すごくリアリティがありました。「めっちゃわかる!」と思いましたね。 ―眞栄田さんの八虎の髪は、銀にも金にも見えるいい色だなと思いました。 山口:原作の漫画は良くも悪くも漫画的な――ユカちゃんとか特に、すごく漫画チックなキャラクターデザインにしてあるのですが、そのへんもリアリティラインの落とし込み方が絶妙でしたね。全員すごく良かった。 眞栄田:八虎の髪の色には、すごくこだわっていて。最初はすごくきれいな金髪だったんです。でもそこから「八虎はどうやってこの髪色になったんだろう?」となって。たぶん、周りに流されて、コンビニでブリーチ剤買ってやったんだろうな、美容院で絶対染めてないだろう、という話になった。だから、ちょっと汚い染まり方をしている。少しだけ地毛の黒色が見えているなど、ムラがある金髪になっているんです。 山口:うちのアシスタントさんが映画の予告を見たときに「八虎くんの髪が傷んでいて、すごい良かったです」って言ってました。いま実際にそういう意図でつくられていたんだとわかって、うれしくなりました。