15歳の至宝、久保建英のJデビューはいつになる?
ただ、FC東京が他のJクラブと異なるのは、今シーズンからU-23チームをJ3に参加させている点だ。2種登録されたことでJ3でのプレーも可能になる。実際、今シーズンのFC東京U-23では久保と平川を含めた15人ものU-18所属選手が2種登録され、そのうち10人がピッチに立っている。 ガンバ大阪とセレッソ大阪もU-23チームをJ3に参戦させているが、練習などはトップチームと分けて活動させている。対照的にFC東京は全体が同じメニューを消化し、週末のリーグ戦を前にしてトップチームとU-23チームとに分けられる。 メンバー編成はトップチームが優先されるため、人数的に不足するときには積極的に2種登録選手を登用してきた。たとえば高校3年生のDF岡崎慎は、累積警告で出場停止となった19日のブラウブリッツ秋田戦を除いて、全21試合に先発フル出場を果たしている。岡崎だけでなく、J3で17試合に出場したMF鈴木喜丈、リザーブとしてスタンバイしていた196センチの長身GK波多野豪も、狭き門をくぐり抜けてトップチーム入りを勝ち取った。真剣勝が繰り広げられるJ3という舞台が、いかに成長を加速させたのか。効果の大きさを立石GMも強調する。 「FC東京は育成をすごく大事にするクラブなので、その意味ではどうしてもU-23チームが必要でした。実際、今年に入って、実質的には(J3が開幕して)6ヶ月ちょっとですけど、他の選手たちも含めて若い選手たちがものすごく伸びましたからね」 J3は原則日曜日に開催されるため、2種登録選手は学校が休みとなる前日土曜日にU-23チームの練習に参加。その時々のチーム状況や選手のコンディションなどが勘案され、必要となれば“ぶっつけ本番”でも翌日のリーグ戦に帯同させる。ベンチにはU-18の佐藤一樹監督がコーチとして入り、2種登録選手の情報を首脳陣に伝えるといった配慮もほどこされている。 18歳未満の国際間移籍を原則禁止とする国際サッカー連盟のルールに、バルセロナが抵触していることが2014年春に発覚。以来、公式戦に出場できない状況が続いた久保は昨春に退団・帰国を決断したが、所属先を古巣の川崎フロンターレの下部組織ではなくFC東京U-15むさしとしたのも、成長へのレールがしっかりと敷かれていたからだろう。 そして、中学3年生ながら、今シーズンから“飛び級”でU-18へ昇格した久保は、インドから帰国後は岡崎をはじめとする2種登録選手たちと同じ軌跡をたどり、まずは土曜日の練習に参加しながらJ3デビューのタイミングをうかがっていくことになる。焦りは禁物とばかりに、立石GMが続ける。 「U-18ではゲームが間延びした状態では“違い”というものをすごく出せる。大人のサッカーをしていくためには、それを90分間、U-18の試合の頭からちゃんと出せるかどうか。森本の場合は体が先にできあがっていて、そこに技術が追いついてきた形ですけど、久保の場合は技術的な部分で突出している点でちょっと違いますよね。この1年間で身長も伸びているし、体幹も強くなってきたけど、体重はまだ軽い。筋トレなどをするにもまだ早い段階なので、いまは身長をもう少し伸ばしていきたいという感じですね。性格的には非常にポジティブで明るい。すぐにみんなと打ち解けあって、輪の中心にいる。コミュニケーションスキルが非常に高いですよね」 FC東京U-15むさし加入したときの163cm、52kgが、いまでは167cm、60kgになった。身体の成長と照らし合わせながら、いつでも“Jデビュー”させてもいい準備を整えた今回の2種選手登録。今後は来春に進学する高校に関して、立石GMは定期的に行っている面談の席で久保サイドの意向を聞きたいとしている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)