76年ぶりにハワイで悲願の鉄道復活も「空気を運んでいる」!? 膨らむ事業費、空港や商業施設を結ぶ日は来るのか 連載『鉄道なにコレ!?』【第66回】
「常夏の楽園」と言われるアメリカ・ハワイ州のホノルル都市圏で鉄道「スカイライン」が2023年6月に開業し、悲願だったオアフ島の本格的な旅客鉄道が約76年ぶりに復活した。マイカー利用者が移行して深刻な道路渋滞が緩和する〝切り札〟になると期待されたものの、地元の日本人から「空気を運んだ電車が行き来している」と聞かされた。巨額の建設費の調達も難航し、国際空港や商業施設を結んで「全線開通」できるかどうかは視界不良とも。現地で乗り込んで実態を探った。(共同通信=大塚圭一郎) 【写真】金沢発最終のサンダーバードに乗ったら…粋な車内アナウンスに涙腺がゆるんだ
※記者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。 ▽高架橋の輪郭から命名 スカイラインはホノルル高速鉄道輸送機構(HART)が事業主体となり、手始めに真珠湾を囲むように東西に延びるアロハスタジアム―イーストカポレイ間の17・7キロ、計9駅が開業した。線路を敷いた高架橋が描く輪郭から「スカイライン(SKYLINE)」と名付けられた。 日立製作所のグループ会社が造った電車は、運転士が不要の完全自動運転だ。最高時速約88キロで走り、片道約22分で結ぶ。 線路幅は日本の新幹線などと同じ標準軌と呼ばれる1435ミリで、線路脇にあるレールの第三軌条から電気を取り込んで走る。 オアフ島ではサトウキビやパイナップルをホノルル港へ運ぶことを主な目的とする鉄道が1889年に開業。旅客列車も走らせるようになり、沿線にできたリゾートホテルを訪れる観光客らを運んだ。第2次世界大戦中には、軍人輸送の主要手段の一つとなった。しかし、戦後に採算が悪化した旅客列車は1947年に運行を終えた。以来、スカイラインが登場するまでの約76年間は、オアフ島の本格的な旅客鉄道が不在だった。
▽路線バスと同じIC乗車券で スカイラインに乗るため、現行区間のホノルル寄りにあるアロハスタジアム駅へ向かった。それぞれの駅にはハワイ語の駅名も付けられており、アロハスタジアムの場合は「ハラワ」だ。 駅ではオアフ島を走っている路線バス「ザ・バス」と接続しており、ホノルル中心部などと結んでいる。 スカイラインは、ザ・バスでも使えるIC乗車券「HOLO(ホロ)カード」で乗車できる。ザ・バスとスカイラインに乗車するため、物販店で1日乗車券を組み込んだカードを9・50ドル(1ドル=150円で約1430円、うち2ドルはカード代)で購入した。ホロカードはスカイラインの駅にある自動券売機でも売られている。 建て替えを控えた競技場「アロハスタジアム」が完成後に利用者が増えることを見込み、駅の自動改札機は12台も並んでいる。ホロカードを改札機に読み取り部分に触れると、前方にある透明な扉が開いた。