25年以上続く「新卒の3割が辞める」問題...就活に求められるアップデートとは?
日本の若手社員の早期退職問題。その背景には、学生が自分の「やりたい仕事」を明確にせず、社会に出る準備も不十分なまま就職活動を進めているという2つの大きな問題があります。この問題を解決するためにできることとは? コンコードエグゼクティブグループ代表取締役社長CEOの渡辺秀和氏が解説します。 【図】職場を壊す「上司のフィードバック」の特徴
日本の就職活動に潜む問題とは?
「今年入社した新卒社員が早くも退職してしまった」「若手社員がなかなか定着してくれない」――。このような悩みを企業の人事の皆さんから伺うことが多くなっています。 新卒社員の約30%が入社3年以内に離職してしまう状況は、ここ数年だけの傾向ではありません。実は、バブル崩壊後、25年以上も続いています。決して、今の若い世代だけの現象ではないのです。 しかも、新卒社員の早期退職は、企業の規模に関係なく起こっています。キャリア支援を行なう私たちの会社にも、就職人気ランキングの上位企業に勤める20代前半の方から多くのご相談をいただいています。 この現象の背景には、「日本の就職活動に潜む2つの問題」があると私は考えています。 ひとつは、多くの学生が自分の好きなこと、やりたい仕事を十分に考えないまま就職活動をしてしまっている点にあります。もちろん、大半の学生は、ESや面接の対策を入念に行ない、企業説明会に積極的に参加するなど、就職活動に熱心に取り組んでいるでしょう。しかし、ポイントはそこではありません。 当然のことですが、自分の価値観や「やりたい仕事」をしっかり把握してから就職活動をしないと、フィットする会社を見つけることはできません。もし、知名度の高い企業や年収が高い企業からの内定獲得にばかり意識を奪われているとすれば、本末転倒と言えるでしょう。 実際、弊社にご相談に来られる20代の社会人の方々を支援する中でも、自分が本当にやりたい仕事ではなかったという転職理由が多く聞かれます。内閣府発表の「就労等に関する若者の意識」調査でも、初職の離職理由として最も高いのは「仕事が自分に合わなかったため」となっており、43.4%を占めています(※)。 ※出典:内閣府『平成30年版 子供・若者白書』 (https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F11340366&contentNo=3) もうひとつは、社会に出る準備が不十分なまま、就職してしまう学生が多いことです。大学で学べることと、社会に出てから求められる知識やスキル、スタンスとの間には隔たりがあるのが実態でしょう。残念ながら、新卒の学生が企業で即戦力として通用することは稀です。 採用企業も、初めから新入社員に高い成果を求めているわけではありません。しかし、顧客へのメール作成のマナーや簡単な議事録の作成、エクセルの操作から教えなければいけないとなると、上司や先輩社員もストレスが溜まります。 また、他者と協働する上で求められる「報連相」などが十分にできないとなると、トラブルを招きやすくなります。結果として、期待される成果を挙げられず、上司やクライアントとの関係が悪化し、仕事を続けるのが辛くなるという事態が生まれることになります。 先述した内閣府の調査結果でも、離職理由の2番目は「人間関係が良くなかったため」で、その割合は23.7%となっています。実際、「上司から叱られることが多くて、会社にいるのが辛くなった」と退職する若手社会人は少なくありません。