『OITA CULTURAL EXPO!’24』大分・別府・佐伯・臼杵・竹田・国東半島で体験する新しいアートのかたち。
また、今回、栗林は、市内の大谷公園にもうひとつの作品《植物元気炉》もつくり上げた。これは、文字通り《元気炉》のドームが植物園になった作品で、中では別府市民が持ち寄った植物、また全国から寄付された植物が共生する。 曰く「一過性のものだけでなく、地元の人だけが知っている美味しいお店のように、土地に根付くようなものもつくりたかった」。この植物園は恒久設置。管理は、地域住民に委ねられ、コミュニティの人と人をつなぎ、地域に元気を生み出す。
また、これまで別府市で行ってきた芸術祭では「人と人が出会うこと」を大切にしてきた、とは山出の言葉だ。「蒸気のなかで人が出会い、また植物園が人と人を繋ぐ。人々の新しい出会いの機会づくりとして、実は以前から栗林さんに参加してほしいと考えていました」。また、地元のアーティストが市内のアートを案内する街歩きツアーも実施。夜は、アーティストと一緒にご飯を食べられるという。
【別府市】栗林隆「元気炉トリップ」
~2024年6月30日。火・水・木曜休。別府市内各地を巡回。会場や時間などは「元気炉トリップ」公式Instagram:genkirotripで案内。500円(特製タオル付き)。 街歩きツアーについて詳しくはこちら。
●佐伯市の人々の記憶に根付く戦争の涙と海
佐伯市では、歴史学や社会学的なリサーチのもと、現代の社会課題に応答する映像インスタレーションなどを手がけて来た藤井光が、新作個展を開催。会場は〈丹賀砲台園地〉の地下爆薬庫跡。 「佐伯市は、九州最東端の場所。第二次世界大戦中にこの小さな漁村に突然、砲台が置かれることになりました。戦争特需もありましたが、その静かな漁村の村が、ある日、戦争の起点となる地域になってしまったわけです。その戦争遺構が今回の会場です」(山出)
展覧会タイトルは『終戦の日 / WAR IS OVER』。オノ・ヨーコとジョン・レノンによる反戦メッセージから取られた題名で、新作映像作品では、終戦の日、涙を流しただろう人々の姿を、佐伯市民が演じている。 「実際、終戦の日、佐伯市でも多くの人が涙を流しましたという記録があります。その感情は、自分の家族が亡くなった悲しさ、悔しさ、苦しかった日が終わりほっとした気持ちなど、人によってさまざまだったはず。今回の藤井さんの作品は、特に国という大きな単位で共有される感情だけでなく、個人的な記憶や心情をすくい上げていて、現代人の心に送り届けてくれる」(山出)