首都圏の私大入試でも「2教科試験だけの年内入試」がついに登場! 東洋大学の新入試が与えるインパクトとは?
近畿圏や中京圏ではすでに導入されている
併願可能な年内入試は、近畿圏や中京圏の私大入試ではすでに定着しています。例えば、近畿大学は2023年11月18日~19日、12月2日~3日に公募制推薦(評定基準なし・志望理由書なし)の2教科入試*²を行い、短期大学を除いて5万108人が志願し、1万3,364人が合格しました。近畿大学内においてもこの人数は、一般選抜のメイン日程である前期A日程に次ぐ規模になっています。 *² 文芸学部芸術学科造形芸術専攻では、実技:デッサンも課される。また、医学部は二次試験で小論文と面接が課される。 また、志願者5万人というと、2024年度一般選抜の志願者数では青山学院大学の4万7,109人より多く、同志社大学(5万974人)や専修大学(5万1,289人)に匹敵する志願者数であり、大規模な入試だということがおわかりいただけるのではないでしょうか。 他にも京都産業大学や龍谷大学など、多くの私立大学でも同様の公募制推薦入試を実施しています。 上図のとおり、首都圏の私立大学とは異なり、近畿圏の私立大学は「関関同立以外は公募制推薦による入学者の割合が多い」という点が特徴です。中には一般選抜同様に複数の入試日を設けたり、1教科入試や高得点の科目の配点を高くしたりする入試を実施している大学もあり、「併願可能な公募制推薦入試」の併願指導が学校や塾で行われています。 近年では、当初は関関同立が第一志望の生徒でも公募制推薦で近畿大学の合格を得ると、関関同立の受験をとりやめるという例も目に付くようになっています。生徒だけではなく、保護者から受験の年内終了を申し出ることも少なくなく、受験生・保護者の大学受験に対する意識の多様化を痛感します。
専願が主流だった「年内入試」も併願可能に
立教大学が2006年度入試から始めたといわれている「全学部入試」(全学部が同一日に一斉に行う入試)は、今や多くの大学で実施されるようになりました。私見ですが、近畿圏や中京圏で行われている「併願可能な学力試験型の公募制推薦」も、同じように首都圏にも次第に広がっていくように思います。 2023年度入試で私立大学の約半数が定員割れしているのですから、ほとんどの私立大学は生き残りをかけて、受験生が集まることならば可能な限り何でもやるというスタンスです。そのため、規模が大きくて知名度も高い東洋大学が始める「学校推薦入試 基礎学力テスト型」に追随する大学が今後出てくると思われます。 特に、東洋大学と同じ大学群にある大学や、東洋大学より入試難易度の低い大学では、「学校推薦入試 基礎学力テスト型」で合格者を持っていかれると、年明けの一般選抜の志願者数が減少します。その対抗策をすぐにでも始めるのではないかと予想します。 実際、大東文化大学や東京福祉大学は、2025年度入試から東洋大学と同じような2科の基礎学力のみで合否を判定する、併願可能な「年内入試」を実施すると発表しています。大東文化大学の「公募制 基礎学力テスト型」と東洋大学「学校推薦入試 基礎学力テスト型」の入試日程を見てみると、大東文化大学の入試日は東洋大学の1週間前、大東文化大学の第1次入学手続締切日は東洋大学の結果発表日の後になっており、両大学を併願しやすくなっています。同様に大東文化大学と東京福祉大学の日程を見ると、両大学を併願しやすい日程になっています。 首都圏では数年前まで、公募制の学校推薦型選抜や総合型選抜でも「専願」や「第一志望」という条件をつける大学が主流だったように思います。また、併願が可能であっても、学校推薦型選抜で出願するには、大学・学部ごとに志望理由書を書き上げたり、小論文や面接など学校に合わせた事前準備が必要だったりすることから、一人の受験生がいくつもの大学を学校推薦型選抜や総合型選抜で併願することは実質的に困難でした。 しかし、東洋大学「学校推薦入試 基礎学力テスト型」のような、併願可能で志望理由書や面接が不要な入試が首都圏で広まると、「年内入試での併願」が盛んになり、近畿圏と同じように11月から12月が大学入試のひとつのピークとなるような気がします。