元日本代表が見据える未来「ブラジル人選手をJに送りたい」 “恩返し”を胸に生きる今【インタビュー】
【あのブラジル人元Jリーガーは今?】三都主アレサンドロ:第3回――現役引退後のセカンドキャリア
元日本代表MF三都主アレサンドロのサッカー人生は、明徳義塾高等学校から始まり、清水エスパルス、浦和レッズ、名古屋グランパス、栃木SCと続き2014年、FC岐阜を最後に、21年間にわたる日本でのプレーに終止符を打った。ブラジルに帰国し、地元パラナ州にある、マリンガ、グレミオ・マリンガ、PSTCの3つのクラブを合わせて2年間プレーしたあとは、あふれんばかりの情熱とともに、セカンドキャリアを生きている。「日本で学んだことを活かしている」と語る彼の、今の活動について綴る。(取材・文=藤原清美/全3回の3回目) 【実際の映像】「馬鹿だったね」三都主が1999年の磐田戦でレッドカード→一発退場の瞬間 ◇ ◇ ◇ 「ブラジルに帰った時、よく『アレックスさんは代表まで行ったのに、なんでそんな小さいところでプレーしてるんですか?』って言われたけど、僕はその質問の意味も分からなかった。僕が生まれた街のチームだよ。気持ちとしては、サッカーに懸ける思いの強い、あの頃の小さいアレックスのままだよって。 自分の街でプロとして試合に出たことなかったので、39歳でその夢も叶った。子供の頃は、ここのスタジアムであるウィリ・デイビズで試合するのが夢だったんですよ。だから、夢に向かって走って行くのはすごい大事なことなんだっていうのを今、選手たちや子供たちに伝えながらね。自分が何をしたいか、どこまで行きたいかっていうのを、ちゃんと決めて頑張って欲しいと、いつもアドバイスしている」 彼の言う「選手たちや子供たち」が、第2のサッカー人生の話につながってくる。その一つが、2020年に地元マリンガで創立し、CEO(最高経営責任者)を務めるサッカークラブだ。日本の人材派遣会社アルコと組んで立ち上げた「アルコ・スポーツ・ブラジル」を前身とし、同社が方針変更して離れた今は「ガロ・マリンガ」として再スタートしている。 「自分が日本からアイデアを持ち込んだクラブで5年目にしてすごく成長してきている。ユースが強いんですよ。州でベスト4や決勝まで行くほどチーム力が上がっていて、ここからまた楽しみです」 アレックスの役割は幅広い。 「チームにはもちろん、テクニカルスタッフもいるけど、選手には僕が常に近くにいるって感じるのが大事なことだと思う。だから、グラウンドにも立つし、スポンサー集めもCEOの仕事。魅力的なクラブになれるように頑張っています。この11月に日本に行くのは、新しいパートナーを探すっていうのもある。 それに日本で学び、経験したことを、いっぱい取り入れているんです。日本の色があって日本人にも入りやすいから、良い選手がいたらブラジルに連れて来たいんですよ。日本人選手がブラジルでサッカーをして、その経験を日本に持って帰る。そういう夢のあることをもっと広げたいです。 今も留学生が2、3人いるけど、もっと来られるようにしたいし、ここで育ったブラジル人選手をJリーグに送ったりもしたいです。若い選手を育てて、僕ならその選手が日本に合うかどうか分かる。でも、なかなか日本の人は若い選手を見ないんですよね。例えば、1部リーグで活躍してる選手を連れて行くんだけど、試合に出てない選手も多い。『誰が見て決めてるの?』って頭に来るし、日本とブラジルの関係をもっと良くしたい。 前にも良い選手がいて、日本に送りたかったんだけどそれが難しくて。彼は今、中東で活躍している。日本のチームが勿体ないことしたなって思った。サッカーでは良い選手がいたら、すぐに獲りに行くクラブが出て来て、早いじゃないですか。そんな中でも、日本に送りたいという気持ちが強いですね」