元日本代表が見据える未来「ブラジル人選手をJに送りたい」 “恩返し”を胸に生きる今【インタビュー】
ブラジルと日本で過ごした人生「すごく大事なプロセスだった」
さらに「アレックス・サントス財団」も運営している。 「プロを目指すんじゃなくても、スポーツをしたいってありますよね。だから、色んな子供たちにチャンスを与えて、スポーツの楽しさを伝えるっていう会社です。NGOみたいなもので、利益を求める会社じゃないんですけど、僕は日本で稼いだお金や家賃収入もあるわけですから、そういうことも頑張ってやってます」 非常に忙しい毎日だが、彼の情熱が、話しているだけで伝わってくる。 「夢? いや、いっぱいですよ。子供たちにも恩返ししたいし、プロチームも成功させたい。もちろん、家族のパパとしても、将来を色々考えたい。今、息子(アラン)が(東海大学附属静岡)翔洋高校にいるんです。すごく期待されてる学校なので、楽しいんじゃないかな。 だから、パパとして、クラブのCEOとして、財団の会長として、全部結果を出せるように頑張っていきたい。スポーツを通して、みんなにチャンスを与えられたら嬉しいですね」 そんなアレックスは今、ブラジルと日本、両国の間で生きてきた自分のことを、どう定義しているのか。 「ブラジル生まれの日本人……の気持ちを持つアレックス、そんな感じですね。ブラジルで両親に育てられたのはすごく嬉しいです。でも、キャリアとしてはずっと日本だったんですよね。だから、僕が明徳に行ったのは1つの鍵だったと思う。厳しいところで諦めずに、自分の夢を信じて走り続けたっていうのは、成長していく段階ではすごく大事なプロセスだった。 礼儀正しくするとか、良いことをしたら、良いことが返ってくるっていうことを学んだ有難みもある。そんなふうに、日本で学んだことをこっちで教えている。だから、本当にブラジル生まれで、日本の気持ちを持つアレックス(笑)」 最後に、今もアレックスを応援している日本のサポーターにメッセージを送ってもらった。 「まだまだ日本に恩返ししていきますよ。だから、毎年日本に行って……まぁ、今の日本の子供たちには、三都主さん『誰?』みたいなのはあるけど(笑)、それはそれで、僕がこういう顔で日本語を話して、サッカーは楽しいよっていうのを伝えられたら、恩返しになると思う。 この11月から1月も、日本でいろんなイベントをやるんですよ。どれだけ子供たちを笑顔に出来るかが、自分にとってはすごく大事なこと。昔のアレックスみたいに、子供たちにも熱く声かけたり、怒ったりもするし、そうしながらサッカーの楽しさをどう伝えることができるか。僕も楽しいし、親もあの三都主が自分の子供を教えてるっていうのは、多分嬉しいし。 ブラジルのチームで、日本人の選手が活躍するのも夢だし、日本人の留学生もこっちに来て成長できるようにしたい。そういう風に、いろんなことをやりながら、日本に恩返しができるように頑張り続けますので、よろしくお願いします」 [プロフィール] 三都主アレサンドロ(さんとす・あれさんどろ)/1977年7月20日生まれ、ブラジル出身。清水エスパルス―浦和レッズ―レッドブル・ザルツブルク(オーストリア)―名古屋グランパス―栃木SC―FC岐阜―マリンガ(ブラジル)―グレミオ・マリンガ(ブラジル)―PSTC(ブラジル)。鋭い突破力と正確なキックを持ち味とする攻撃的アタッカーとして活躍。2001年に日本へ帰化。日本代表メンバーとして2004年のアジアカップ優勝、02年に日韓W杯ベスト16進出に貢献した。 [著者プロフィール] 藤原清美(ふじわら・きよみ)/2001年にリオデジャネイロへ拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特に、サッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のテレビ・執筆などで活躍している。ワールドカップ6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTubeチャンネル『Planeta Kiyomi』も運営中。
藤原清美 / Kiyomi Fujiwara