バイデン氏による米製ミサイル使用許可、トランプ次期大統領の側近らが強く非難
アメリカのジョー・バイデン大統領が、同国製の長距離ミサイルをウクライナがロシア領内への攻撃で使うことを許可したとされることで、ドナルド・トランプ次期大統領の側近たちは当惑するとともに、状況激化につながる危険な動きだと非難している。 トランプ氏自身はこの件でコメントしていない。だが大統領選では、ウクライナでの戦争終結を公約してきた。 ウクライナに巨額の支援をしてきたバイデン政権は、ウクライナがアメリカ製の兵器を使って国境から遠く離れたロシア国内地域を攻撃することを、長い間、越えてはならない一線にしてきた。しかし週末にかけて、その方針を捨てたと報じられた。 これを受け、トランプ氏の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏は、来年1月のトランプ政権発足前に、バイデン氏が「第3次世界大戦を起こそうと」しているとソーシャルメディアに投稿した。 ただ、バイデン氏の決定は正式には確認されておらず、今後も確認されない可能性がある。 国務省のマシュー・ミラー報道官は、政権末期に大統領が重大な政策決定をすることの妥当性について問われると、「(バイデン氏が)選挙で任された任期は4年間で、3年10カ月ではない」と述べた。 また、「私たちは米国民の利益だと信じる政策利益を追求するために、任期の1日1日を費やしていく」、「次期政権が別の見方をしたいなら、もちろん、そうする権利はある」と説明。 「大統領は常に1人しかいない」、「次の大統領は、就任したら独自の決断をすればいい」と付け足した。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、この件に関して発表することはないとし、「ミサイルそのものが語ることになる」と述べた。 ■トランプ陣営は不満 今月5日の大統領選に勝利したトランプ氏は、来年1月20日に第2次政権を発足させる。選挙戦では、世界各地の戦争へのアメリカの関与を終わらせ、米国民の生活向上のために税金を使うと約束してきた。 ロシアとウクライナの戦争については、24時間以内に終結させると主張してきた。だが、その方法は明言していない。 ただ、トランプ氏が常に自分を「まとめ役」だと考え、バイデン氏に手柄を取られたくないと思っていることは明白だ。 今回のバイデン氏の動きを受けてトランプ・ジュニア氏は、「軍産複合体はどうやら、うちの父が平和を作り出して人命を救えるようになる前に、第3次世界大戦を確実に始めておきたいようだ」と書いた。 トランプ次期大統領を熱心に支持するマージョリー・テイラー・グリーン下院議員もバイデン氏を非難し、「米国民は11月5日に、まさに政権最終盤でのこういう決断に反対し、外国の戦争に資金や兵力を提供したくないのだと投票した。私たちは自分たちの問題を解決したい」と、ソーシャルメディア「X」に投稿した。 しかし、トランプ氏の盟友が全員同じ意見だというわけではない。 第1次トランプ政権で欧州安全保障協力機構(OSCE)大使を務めたジェイムズ・ギルモア氏は、「バイデンに対する私の批判は、他の保守派やトランプ支持者と同じだ。バイデン政権はこの件について、対応が遅すぎた」とBBCに話した。 一方、次期副大統領のJ・D・ヴァンス上院議員は、これまで常々、ウクライナへの武器供与に反対してきた。ウクライナがロシアへの攻撃で使うミサイルシステムなどの兵器について、アメリカには提供し続ける製造能力がないと次期副大統領は主張している。 ギルモア氏は逆に、アメリカがウクライナに既存の武器を提供することでアメリカはむしろ自国の武器システムを刷新できると話すが、欧州の同盟諸国が従来より大きい役割を担う必要があるとも述べた。 「トランプ大統領はこれについて、まったく正しい。西欧諸国がしっかり役目を果たした方が、同盟は強くなる」、「アメリカはいつまでも一人でやるわけにはいかない。納税者がそれを許さないし、次期政権も許さないし、私もそうだ」とギルモア氏は話した。 米ピュー研究所の世論調査では、共和党支持者の62%が「ロシアと戦うウクライナを支援する責任は、アメリカにはない」と答えており、支援停止を望む声が同党で大きいことがうかがえる。 ■プーチン大統領も沈黙 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の報道官は18日、アメリカが「火に油を注いでいる」と述べた。ロシア大統領府(クレムリン)は、米供与のミサイルによる攻撃があれば、アメリカによる攻撃と受け止めるとする声明を出した。 プーチン氏自身は今回の件でコメントしていない。しかし、西側供与の長距離ミサイルの脅威は十分に認識している。 米シンクタンク「戦争研究所」は、米製長距離ミサイル「陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS、エイタクムス)」の射程圏内にあるロシア軍施設225カ所の地図を公表している。 アメリカのウクライナ特使を務めたカート・ヴォルカー氏は、バイデン氏の今回の決定によって、ウクライナが「現在はロシアの安全地帯にある飛行場、弾薬庫、燃料供給、後方支援を狙う」ことが可能になると述べた。また、バイデン氏の決定の影響で、ロシアは従来より慎重に行動するだろうと話した。 ウクライナはしばらく前から、ATACMSや、イギリスやフランスの長距離巡航ミサイル「ストームシャドウ」を保有している(数量は明らかではない)。ただ、ロシア国内への攻撃に使うことは許可されていない。 フランスとイギリスも今後は、アメリカと同様の許可をウクライナに出すと見込まれている。英仏両国はこれまでのところコメントしていない。 ホワイトハウス関係者らは米メディアに、バイデン氏の心変わりはロシアが北朝鮮兵を送り込んだことを受けたもので、北朝鮮に対してこれ以上派兵するなとのシグナルを送るものでもあると強調している。 ウクライナではここ数日、ロシアの攻撃で多数の死傷者が出ている。南部オデーサでは18日の攻撃で、警官7人を含む10人が死亡、47人が負傷した。 (英語記事 Biden's move on missiles for Ukraine angers Trump allies
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