令和の若者だって「ポルシェ」が欲しい! クルマ好きの大先輩・渡辺敏史さんと911を買いに行く。【前編】
20代のサラリーマンで「ポルシェ」は無謀な夢か。それでも「ポルシェが欲しいんです」という29歳の若者を引き連れ、モータージャーナリストの渡辺敏史さんは、ポルシェセンター浜田山を訪れた。果たして憧れのポルシェライフは叶うのか。今回はその前編をお届けしよう。 【写真】いま新車の「ポルシェ911」って一体いくらで買えるの?
29歳、ポルシェを買いに行く
「ポルシェ欲しいんです」 それは出版社勤務のユカワくんのひと言から始まった。 彼の齢は29歳。クルマのみならず、酒も然り、海外旅行も然り……で、若者の〇〇離れとステレオタイプに括られてきた世代だ。そんな彼が言う「ポルシェ欲しいんです」は、年金や健康診断の数値に怯える拙のような還暦寸前の「ポルシェ欲しいんです」とは熱意や純度が大きく異なる。 しかもよくよく話を聞いてみれば、欲しいのはマカンやカイエンといった売れ筋のSUVではなく、ボクスター&ケイマンや911といったスポーツカーのラインナップだという。当然ながら婦女子的には前者の側が圧倒的人気。背が低いわ音が大きいわと、スポーツカーはむしろモテない要素が目白押しだ。不埒な下心ではなく、素直な憧れがそう思わせているのであれば、昭和のクルマ好きなオッさんとしては一肌脱ぎたくもなる。 そこでユカワくんを引き連れて訪れたのはポルシェセンター浜田山。都心からのアクセスもよく、新車のみならず認定中古車の在庫も豊富なこちらのお店で、果たして二十代のポルシェライフは成立するのかをうかがってみた。対応してくれたのは認定中古車部門を統括する五十嵐徹也さんだ。
ポルシェの憧れは成人式に遡る
──まずは単刀直入にお尋ねしますが、二十代のお客さんっていらっしゃいますか? 五十嵐 うーん、当店では正直なところ、ほとんどいらっしゃらないですね。これは年齢的なところではなく、場所的な特性だと思います。やはりこの辺りは住宅街ですから、若くても子育てをされているようなファミリー層が多いイメージです。そういった方々には、SUVのような後ろにもドアがあって荷物も積める使い勝手の良い車に人気が集まっておりまして、当店でも販売の主軸になってます。 ──なるほど。こちらもかなり都心に近いところにありますが、より都心に近くなれば話は変わってくるのかもしれませんね。ところでユカワくんはSUVには興味ないの? ユカワ はい。自分の場合、ポルシェといえばやっぱりスポーツカーという想いがあって。 五十嵐 若い方にそう言っていただけるのは、我々としても大変嬉しいことです。 ──例えば街角での鮮烈な出会いとか、映画の劇中車に憧れてとか、何か好きになるきっかけはあったの? ユカワ いや、特にこれといった特別な経験はないんですが、気づいたらポルシェ好きになってて。僕、茨城の出身でして。 ──茨城はよくも悪くもクルマにはアツい土地柄だね(笑)。 ユカワ 周りの友人もクルマ好きが多かったんですよ。で、成人式の時に想い出作りにポルシェのオープンカーを借りて。 ──えっ、誰かのお父さんのクルマを借りたの? ユカワ いや、レンタカーです。お金を出しあって4人で乗り回しました。 五十嵐 4人乗りということは911カブリオレですか。そんなレンタカーがあるんですね。 ユカワ そんな経験もあったもので、いつかは自分でポルシェを所有したいという想いを強く抱くようになってしまいました。 五十嵐 いや、素晴らしいですよ、それは。私も若い頃はお給料の大半(半分以上)をクルマに費やしていた時期がありまして……。 ──昔は破滅的なローンでスカイラインGT-Rを買って死ぬほど働いて返すみたいなのが普通でした。90年代とか、バブルの残滓みたいな気分がある中で、まぁなんとかなるだろくらいの感じでいっちゃってたんでしょうね。 ユカワ まぁ望んで身は滅ぼしたくはないんですけど、でも新車でポルシェというのは自分の歳では現実的じゃあないですよね。 ──新車価格だとボクスター&ケイマンで900万円台の半ば、911だと約1700万円がスタートラインだから、これはかなりの破滅ローン系だしオススメはできないなあ。 五十嵐 ポルシェの911や718のスポーツ系のモデルは大変人気を頂戴しておりましてバックオーダーをいただいている状況です。そのため、ご納期も生産次第になってしまうのでなんともお伝えしにくいところです。 ユカワ なるほど。でも憧れは遠いほど想いが募ります。