<Jリーグ>広島を首位に押し上げた「3-6-1の可変システム」
森保監督も前任者を踏襲
昨年から指揮を執るOBの森保一監督は、前任者のスタイルを踏襲。その上で相手ボール時に自陣深くに引くだけでなく、高い位置から素早くアプローチする積極的な守備も併用した。 結果としてリーグ2位の63得点と攻撃力を維持し、同じく2番目に少ない34失点と守備力を向上させたことが、悲願の初タイトル獲得につながった。 今年8月中旬からは、5試合連続で白星から遠ざかるエアポケットに陥った。森保政権下で初めてとなる連敗も喫したサンフレッチェはいかにして立ち直り、再奪首に成功したのか。 「調子が悪い時期でも立ち戻ることができる場所、自分たちのサッカーというのがあれば、迷うことなくプレーができる。ぶれているチームは、やっぱり結果が出ていないので」 森崎和は6年間の軌跡が拠りどころになったと強調する一方で、苦笑いしながら「メリットはたくさんありますけど、実はそれだけではないんです」と打ち明ける。
「可変システム」のデメリットとは
死角がないように映る「可変システム」のデメリットとは、その独自性ゆえにマスターするまでに多大なる時間を必要とする点にある。前出の水沼氏が指摘する。 「選手の相互理解とコンビネーションが最も重要になるので、どうしても同じメンバー構成になる。代役の利かない選手が多くなる中で、けが人や出場停止の選手が出た時にどう対処するか。システムのデメリットというよりは、チームを作り上げていく上でのトレーニングにおけるデメリットと言えるかもしれない」
代表チームへの導入は難しい
昨年から指揮を執るレッズで「可変システム」を伝授しているペドロヴィッチ監督が、こんな言葉を残したことがある。今年5月ごろのことだ。 「サンフレッチェで数年もの時間を要したことが、レッズでは1年とちょっとで浸透しつつある」 レッズの選手個々の能力は高いと強調した場面だったが、コメントからは毎日指導できるクラブチームだからこそ実践可能なシステムという側面も伝わってくる。 言い換えれば、年間の活動日数が70日前後となる代表チームへ導入するのは極めて難しいということになる。実際、佐藤はこんな見解を示してくれた。 「最近の代表を見ていると、前のほうはそれっぽく(可変に)なっているときがあるけど、ボランチが最終ラインに下がる形などはすぐには難しいという感じですね」