ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept、スーパー耐久第3戦での“リベンジ”はならず。「想定していなかったことが起こり始めている」
7月28日、大分県日田市のオートポリスでENEOSスーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE第3戦『スーパー耐久レース in オートポリス』の決勝レースが行われたが、第2戦富士24時間でたび重なるブレーキトラブルに見舞われ、悔しいレースとなったST-Qクラスに参戦する“水素カローラ”ことORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは、この一戦に向け万全の対策を施し“リベンジ”を期して臨んだものの、5時間の決勝では別のトラブルが起きてしまった。 2023年から液体水素を燃料として挑戦を続けているORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは、異形(楕円形)の液体水素タンクの投入、『デュアルドライブ』と呼ばれるクランク機構を使ったポンプを採用し、1スティント30ラップの実現を目指し第2戦富士に臨んだが、ABSアクチュエーターの電圧変動が原因で、長いガレージでの作業を強いられていた。 第3戦オートポリスに向けては、ブレーキに対策を施し、事前にテストも実施。ポンプの耐久性も確認するなど万全の体制で臨むと、実際に木曜の特別スポーツ走行から大きなトラブルなく決勝日を迎えていた。しかし、レースでは思わぬトラブルが起きてしまうことになった。 佐々木雅弘がスタートドライバーを務め、序盤から1スティント26周を行うなど航続距離の長さをみせ走行していたORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptだったが、トラブルを感じ取った佐々木はピットイン。1時間以上におよぶガレージでの作業を強いられてしまった。 レース中、メディアに向けて説明を行った高橋智也GRカンパニープレジデントは、今回のトラブルについて「水素カローラは、ふたつの系統の電源系を搭載しています。12Vと48Vのふたつです。主に12Vが市販車で使われる電源システムなのですが、48Vは液体水素ポンプの駆動に使っています。その48Vの電源トラブルによってクルマを止めることになりました」と説明した。48Vの電源は通常、トヨタ車では使われていないものだという。 その後、電源に関する部品を交換し石浦宏明が乗り込みふたたび走り出すと、終盤小倉康宏がドライブし、最後はモリゾウが乗り込みピットアウトしたものの、チェッカー目前で別のトラブルも発生。ガレージでレースを終えることになり、目標としていた“リベンジ”は成らなかった。 「前回の課題はうまく克服してこられたと思いますが、今まで想定していなかったことがたくさん起こり始めています。原因はこれから解析しますが、水素ポンプの耐久性が上がったりと、完成に近づいていけばいくほど、他のところが厳しくなるようなことが今後も起こってくるだろうと思っています」と高橋プレジデント。 今までにない領域に向け画期的な技術を投入し挑戦を続けているのがORC ROOKIE GR Corolla H2 concept。その挑戦はクルマ、そしてカーボンニュートラルに向けた未来を切り拓くためのもので、ひと筋縄ではいかない。毎戦がチャレンジであり、はるか彼方の“ゴール”に向けた一歩一歩にもなる。 高橋プレジデントは「“リベンジ”を果たせたとは思っていません。モリゾウさんとも話したのですが、毎戦完走を目指して戦ってはいるのものの、『そこがゴールではないよね』という話をしています」と語った。 「将来、ここでやっていることを“ちゃんとお客さまにお届けする”ということをゴールと捉えると、一戦一戦、いろいろあるけれど、そこで一喜一憂するのではなく、しっかりと地に足をつけて、“モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり”をやっていくことが大事だと思っています」 [オートスポーツweb 2024年07月28日]