日本製鉄、米政府を提訴へ…USスチール買収禁止巡り「政治によって著しく適正さ欠く審査」
日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画を巡り、米国のバイデン大統領は3日、買収を禁止する命令を出したと発表した。発表を受け、日鉄とUSスチールは、「法的権利を守るためのあらゆる措置を講じていく」とした共同声明を公表。今後、米政府を相手取った訴訟の提起などを通じて手続きの適正さを確認し、買収計画の実現を目指す構えだ。 【表】日鉄によるUSスチール買収計画の推移
両社は共同声明で、米政府の対米外国投資委員会(CFIUS)による買収計画の審査を、「政治によって著しく適正さを欠いていた。実質的な調査に基づかず、バイデン政権の政治的目的を満たすためにあらかじめ決定されたもの」と非難した。その上で、「我々は、米国で事業を遂行することを決してあきらめない」として、買収計画の実現を目指していく考えを強調した。
バイデン氏は、両社が原則30日以内に、「買収計画を完全かつ永久に放棄するために必要な全ての措置」を講じるよう命じた。買収を禁止とした理由については、「国内で所有・運営される強固な鉄鋼産業は、国家安全保障に不可欠であり、強靱(きょうじん)なサプライチェーン(供給網)にとっても極めて重要だ」と指摘した。
バイデン氏の発表を受け、買収計画に反対する全米鉄鋼労働組合(USW)のデビッド・マッコール会長は、「取引阻止の決定を歓迎する。組合員や国家安全保障にとって正しい行動であることに疑いの余地はない」とのコメントを出した。
買収計画は日鉄が2023年12月に発表し、USスチールも24年4月の臨時株主総会で計画を承認した。ただ、米大統領選で労働組合の票を取り込みたい民主、共和両党の思惑も絡んで政治問題化した経緯がある。CFIUSは24年12月23日まで買収計画の審査を行ったが、米国の安全保障上のリスクについて委員間で合意できず、バイデン氏に最終判断を委ねた。
米国では今月20日、トランプ次期大統領が就任する。トランプ氏も昨年12月、買収計画に対して「全面的に反対する」とSNSへ投稿しており、難しい状況が続く見通しだ。
USスチール株、6・5%下落
バイデン氏の発表を受け、3日のニューヨーク株式市場ではUSスチールの株価が前日比6・5%下落した。同社は経営不振が続いており、市場では先行きを不安視する見方が広がった。