大学の「学費値上げ論争」が空転する日本の大問題 これからの日本の国立大学が果たすべき役割は?
もちろん、国公立大学がファンドを設立し、直接ベンチャービジネスに挑戦するというのが唯一のやり方ではありません。民間企業が挑戦し、それを国公立大学が「研究」や「教育」で支援・協力するというやり方もあります。日本では、むしろこちらのほうが長い歴史があり、一般的です。 個人的には、大学が民間企業を支援・協力するというやり方のほうが国民の納得を得やすいし、効果的だと思います。ただ、どういうやり方が適切かは、今後、じっくり検討するべきでしょう。
今回の学費値上げ騒動で残念に思うのは、ここまで書いたような大学の役割に関する議論に発展していないことです。 多くの学生・一般国民は、「値上げ反対!」「この物価高にまた値上げ?」ということで、学費のところで議論が止まっています。東大の藤井総長は、ようやく学生との対話を始めた程度で、主なお金の出し手である国民に大学の役割を説明する意向はなさそうです。 繰り返しますが、大学は国家の競争力の源泉。今後、大学のあり方を巡る国民的な議論が深まっていくことを期待しましょう。
日沖 健 :経営コンサルタント