大学の「学費値上げ論争」が空転する日本の大問題 これからの日本の国立大学が果たすべき役割は?
学生数で見るならば、各国の大学教育を担う国公立大学と私立大学のバランスは、以下の3タイプに分けることができます。 ① 私立大学が中心:イギリス ② 国公立大学と私立大学がバランス:アメリカ、韓国、日本 ③ 国公立大学が中心:ドイツ、中国 ここで特異なのが、イギリスです。大半のイギリスの大学は公的な支援を受けており、公立大学に分類されることもあります。ただ、運営の自由度は極めて高く、実質的には私立大学といえるでしょう(表ではUNESCOの分類に基づいています)。
アメリカ、韓国、日本は、国公立大学と私立大学がバランスしています。ただ、内実はかなり異なります。 アメリカは、学部の教育では州立大学が優勢ですが、大学院教育や研究、さらにベンチャービジネス育成では、ハーバード大・スタンフォード大・MITなど私立大学が重要な位置を占めています。 韓国は、教育では私立大学が主体ですが、国立のソウル大と私立の高麗大・延世大などが教育・研究で評価が高く、バランスの取れた役割分担になっています。
日本は、首都圏の教育では私立大学が重要な位置を占めていますが、地方の教育では国公立大学が優勢です。理科系の研究やベンチャービジネス育成は国公立大学が優勢ですが、人文社会系の研究では私立大学もかなり貢献しています。 ドイツ、中国は、教育も研究も国公立大学が主体で、私立大学はビジネス実務教育などを補完する程度です。また、表には記載していませんが、ヨーロッパ諸国や発展途上国の多くは、③国公立大学が中心です。
このように、国公立大学と私立大学の役割分担は、国によってまちまちです。ただ、大まかには、発展途上国では官僚を育成するための国公立大学の役割が大きく、先進国では教育や研究のニーズが多様化し、私立大学の役割が相対的に大きくなると言えそうです。 ■国公立大学がベンチャービジネス育成に注力 では、今後わが国で、国公立大学はどういう役割を果たしていくべきでしょうか。 大学を教育の場とするなら、法念さんが主張する通り、国公立大学を中心に安い学費でより広い層に教育の機会を提供するべきかもしれません。ただ、大学を教育の場と限定するのは、世界のトレンドと乖離しています。