早大OBの「心のふるさと」だった老舗ラーメン店「メルシー」

　6月29日に突如閉店した東京・新宿区の老舗ラーメン店「メルシー」。1958年に早稲田大学近くで開店し、吉永小百合やタモリ、堺雅人ら同大のOBたちに愛された「心のふるさと」だった。閉店前に配布された手紙によると、閉店理由は「人手不足、後継者不足により継続が困難」。コロナ禍の頃からは物価高にも悩まされており、2代目店主の小林一浩さんは「デイリー新潮」のインタビューに対し、「少しでも長く続けたいとは思っているが」「あと5～6年かな」と現状を語っていた。 【写真を見る】色濃い目のスープにコーンを添えたラーメン、ガラスケース入りの食品サンプル…2022年に撮影された「メルシー」店内 （2022年9月4日「デイリー新潮」に掲載された記事の再録。本文中の年齢、価格等は掲載時のままです） 　***

　創業64年目を迎えた「メルシー」のドアを開けると、懐かしい壁掛け式の扇風機が目に入る。その壁にはメニューが貼ってある。看板メニューのラーメン（500円）は、煮干しダシの効いた正統派の東京ラーメンだ。都内ではかなりの低価格と言っていいが、それでも値上げに踏み切ったと2代目ご主人の小林一浩さん（61）は言う。 小林:今年1月に麺の仕入れ値が上がったんですよ。これまでもずいぶん頑張ってくれていたと思うけど、仕方がない。うちは先代の時から、美味くて、ボリュームがあって、安く提供してきたけれど、学生街だから美味いのとボリュームは落とせない。やむなく、価格を上げることにして、ラーメンも450円から500円に。

――早稲田の学生の胃袋を満たしてきた老舗飲食店は様々あるが、最近はたたむ店も少なくない。蕎麦とカツ丼の三朝庵、さんやラーメンの西北亭、洋食のエルム、天ぷらのいもや……。 小林:ご主人が体を壊したり、後継者がいなくてやめざるを得なくなったところが多いようです。実はうちも、ネット上で閉店の噂が広まったことがあるんですよ。色々な古い店が閉店しているという記事がきっかけでした。最後にメルシーは頑張ってる、と書いてあったんですが、なぜかメルシーも閉店という話になったらしい。早大OBのお客さんが、わざわざ来てくれたり、電話してきたりと心配してもらいました。