2つのプランで天皇杯決勝進出を決めたガンバ大阪は川崎Fに雪辱を果たすことができるのか?
ボール支配率で徳島の後塵を拝し、例えピンチを招いたとしても守護神の東口順昭や、キャプテンのDF三浦弦太を中心に粘り強く守る。要は「肉を切らせる」という我慢の展開と、その上で「骨を断つ」ための筋道、つまりゴールを奪うための青写真を選手たちが鮮やかに具現化した。 後半8分の先制点は徳島のビルドアップ時に照準を定めていたダブルボランチ、小西雄大からキャプテンの岩尾憲への縦パスがわずかにずれた瞬間から生まれた。MF矢島慎也がボールに突っかけ、パスを受けたFW渡邉千真が素早く右へ展開。MF小野瀬康介のクロスにMF倉田秋がボレーを放ち、こぼれ球をめぐって生じたゴール前の混戦からFWパトリックが執念で押し込んだ。 押し込みながらも先に失点した徳島の足が止まりがちになり、入れ替わるようにガンバ本来のパスワークもさえてくる。同37分には右サイドを細かいパスで崩し、パトリックのスルーパスに抜け出した途中出場のMF福田湧矢が、ファーストタッチでダメ押し点となる追加点をもぎ取った。 2つのプランがともにゴールへ結びつく会心の勝利を、宮本監督は「今シーズンやってきたものが今日も出た」と、現役時代と変わらない冷静沈着な口調で振り返った。指揮官が言及した「やってきたこと」とは、かつての看板だった打ち合い上等の超攻撃的スタイルから試合巧者への変身となる。 今シーズンのJ1リーグで2位に入り、新型コロナウイルス禍による変則開催のもとで準決勝から登場できる天皇杯と、来シーズンのACL出場権をそれぞれ獲得。先のJリーグアウォーズで宮本監督が優秀監督賞に輝いた戦いを振り返ると、従来のガンバにはない数字が浮かび上がってくる。 手にした20個の白星のうち、ボール支配率、シュート数の両方で対峙したチームの後塵を拝している試合が実に「16」を数える。しかも、そのうちの「10」が1点差勝利だった軌跡からは、ブロックを作って守備に比重を置く時間帯が増える状況を厭わずに、我慢を合い言葉にしたゲームプランのもとで相手を焦らし、疲れさせ、数少ないチャンスを確実にゴールに結びつけてきたことがわかる。 この日の準決勝でも徳島のストロングポイントを認めた上で、試合の主導権と引き換える形で、チームが一丸となって思いをシンクロさせて勝機を見出した。5大会ぶり7回目の決勝行きの切符を、攻撃陣の中心を担うFW宇佐美貴史は大きな手応えとともに受け止めている。 「今年チームとしてやってきたことを、なぜ自分たちは(リーグ戦で)2位に入れたのか、というところを見返してみると、決して綺麗ではないですけど粘り強く、本当にギリギリのところでみんなで踏ん張って、勝ち点を積み上げてきたことが大きな要因だと思っています」