カワサキ「Z2」オーバーサイズピストンでシリンダーもリフレッシュ ~日本の至宝「空冷4発」を未来へ継承~Vol.28
段取り変更無く4気筒シリンダーのボアを仕上げる重要性
単気筒エンジンのシリンダーは1箇所のボアを仕上げるため、現状シリンダーのセンターを拾って、正しい真直度でオーバーサイズにボーリングします。 【画像】カワサキ「Z2」シリンダーボア拡大の工程を画像で見る(15枚) 一方、一体型マルチエンジン用シリンダーの場合は、シリンダーボアを仕上げる作業と同時に、各気筒間の位置関係を厳密に管理しなくてはいけません。
旧式ボーリングマシンの多くは、ひとつのシリンダーを仕上げるための機器が多く、仮に、4気筒エンジンの場合は、シリンダーの固定段取りを変更しながら、4か所のシリンダーを加工する作業になります。 iB井上ボーリングが行うシリンダーボーリングは、単気筒エンジンでも4気筒エンジンでも、縦型NCフライス盤を利用しているのが特徴で、シリンダーブロックをベッドの上へ固定したら、その状態で各シリンダー孔の位置関係を測定します。
つまり、現状ボアの中心を拾ってオーバーサイズにボーリングするのではなく、4つのシリンダーの中心が「一直線上に並ぶ」ように、精密なボーリング加工が可能になります。量産メーカー向けに純正部品や試作部品の製作納品を長年担当してきた井上ボーリングならではです。 ここでフルレストア中のカワサキZ2用シリンダーは、Z1用スリーブへの入れ換えと、オーバーサイズピストンに合わせたボーリング&ホーニング(もちろんプラトーホーニング)を依頼しました。 現在では、アルミスリーブ内壁に特殊めっき処理を施したICBMシリンダーを利用した「モダナイズ」が普及しています。圧倒的な放熱性、圧倒的な耐摩耗性、そして、鋳鉄シリンダーと比べて摺動滑性が高まるので、ピストンリングやピストンスカートの摩耗対策になり、長期間に渡り性能維持が可能な内燃機加工技術になります。
潤滑性能が高く安定したプラトーホーニング技術
NCマシンによって高精度なボーリング加工を終えたシリンダーは、潤滑性能が高いことでも知られるプラトーホーニングで仕上げていただきました。 プラトーとは「高原」を意味します。標高が高い山岳地帯の中にある「平野」のようなエリアを高原と呼びます。プラトーホーニングとは、まさにそのような仕上げを目指したポ―ニング技術になります。