カワサキ「Z2」オーバーサイズピストンでシリンダーもリフレッシュ ~日本の至宝「空冷4発」を未来へ継承~Vol.28
最初に粗めのホーニング砥石でボーリング直後のボアを仕上げます。目視で粗さ加減はわかりにくいですが、粗めのホーニング砥石で仕上げることで、特有のクロスハッチが通常以上に深い溝となって仕上がります。そのギザギザ壁面に対して、指定通りのピストンクリアランスを狙って仕上げ用のホーニング砥石で加工すると、ギザギザの先端が研磨されて平面になります。 この平面を高原=プラトーに置き換えたのが、プラトーホーニングになります。粗めのホーニング砥石で仕上げた深い溝が、ところどころに残っているので、その溝がオイル溜まりの役割を果たします。そんな状況から、ピストン運動時のピストンスカートは、広い平面と深いオイル溝の上を摺動することになり、高い潤滑性能を期待できます。シリンダーとピストンの摺動に関して「ナラシ運転不要」とも言われる技術がプラトーポニングでもあります。
プラトーポニングを終えると、最後の仕上げ加工がシリンダー面の平面研磨になります。iB井上ボーリングでは、円筒研磨機を利用した平面研磨を行っています。 フェイスカッターを使った切削研磨とは異なり、精密な砥石研磨を行うと、加工面にツールの痕が残らない仕上がりになります。1/100ミリ単位で平面研磨できますので、長年に渡る締め付けなどで歪んでしまった部分も、完全なるフラット面に再現できます。 このZ2シリンダーは、15/1000ミリ程度の研磨で、フラットなシリンダー面を作ることができました。シリンダー面やシリンダーヘッド面の歪みが、オイル漏れやオイル滲みの原因になっているケースが多いので、そんな状況の改善にはうってつけの研磨加工になります。 撮影協力/iB井上ボーリング
たぐちかつみ