医師が警告する「乳幼児期に言うことを聞かせすぎる」危険性
わが子を救う鍵をにぎっているのはお母さん
では、摂食障害になった子は、どのようにして立ち直ることができるのでしょうか。さまざまなきっかけがあると思います。 方法はひとつではありません。お母さんが一生懸命ご飯をつくって食卓に並べてくれたり、いっしょに寝て愛情を思いきり子どもに提示してくれたことで立ち直る子もいれば、母親ときっぱり決別したことで立ち直る子もいます。 いずれにしても、拒食症のきっかけがお母さんであることが多いように、立ち直りのきっかけもお母さんである場合が多いのです。 青少年のひきこもりの臨床に、長年、入寮制度を取り入れて取り組んで来られた精神科医で生野学園理事長の森下一氏は、「ひきこもりから社会に向けて再出発する際の第一歩が、母親への信頼の回復であることが多い」といわれますが、本当だと思います。 拒食症もそれと同じようなことなのです。摂食障害は、その子が望むことを全面的にしてあげること、そして、母親への信頼を回復することで立ち直ることが多いのです。 【まとめ】摂食障害は、その子が望むことを全面的にしてあげること、そして、母親への信頼を回復することで立ち直ることが多いのです
子どもはいつも、親の期待に一生懸命こたえようとしている
私のところにやってきたある女子大生の話です。彼女のご両親は「できのいい、自慢の娘だ」とおっしゃっていて、実際、勉強もよくできたのですが、妊娠と人工中絶を何度も繰り返すという状態でした。何度繰り返したかわからないほどです。 でも孤独でいられないために、すぐヒッチハイクをして車を止めて、性的な関係をもってしまうということでした。気持ちが沈んでくると、衝動を抑えられないのです。 なぜ彼女はそのような状態になってしまったのか。その根底には、親の期待に一生懸命こたえようとして、がまんや無理を重ねていたことがあります。 その無理が原因で、彼女は自己破壊的な行動を繰り返し、実家にいると何をするかわからない状態が続いたため、両親の了解のもと病院へ入院させました。入退院を繰り返していたのですが、看護士や医師の献身的なサポートにより、徐々に精神的に安定するようになっていきました。 回復するのに1年以上かかりましたが、ひとり暮らしをはじめ、現在は自立した生活を送っています。 ひとつ残念だったことは、彼女がよくなっていく過程に、両親の変化はなかったことです。最後まで自分たちの育て方は間違っていない。こんなふうになってしまった娘に失望しているという様子でした。彼女が安定を取り戻したのは、親ではなく医療スタッフの理解とサポートによるものが大きかったのです。