医師が警告する「乳幼児期に言うことを聞かせすぎる」危険性
こういう例もありました。小学校4年生の少年の例で、とても珍しいケースです。彼の家は3世代で生活していましたが、お母さんが入浴中、義父にのぞかれてしまいました。そのことがあってからというもの、お母さんにとって、義父との同居はとても不愉快なものに変わってしまったのです。 そして、ある時期から、夫と義父に顔つきや物腰がよく似ている息子に対して、強い拒否感が働くようになりました。 彼は、母親の拒絶がきっかけで男の子には珍しい拒食症になってしまいました。お母さんは夫を拒否し、義父を拒否しているのですが、結果として、その夫と義父に似ている息子に対しても強い拒否感を抱いてしまったのです。 拒食症は食べ物への拒否ですが、そこには自分をとりまく人やすべての物事に対する拒否の感情があります。それはまた、自分のそれまでの半生への否定でもあるのです。 少年は母親に自分の存在を否定されたことにより、母親に対する拒否感が働き、拒食症になってしまったのです。彼は拒食症と闘っている間、母親への恨みをあれこれ綴っています。母親に対して敵討ちのような、攻撃的なことを書いていました。 こうした強烈なエピソードがなくても、多くの拒食症・過食症の子どもは、親に対して拒否的で攻撃的な感情をもっています。 私は単純に、お母さんがいたらなかったとは思いません。むしろ、摂食障害の子どもをもつお母さんは、夫に失望していることが多いように思います。あるいは離婚していて片親のケースもあります。 すべての親がそうだというわけではありませんが、摂食障害の子どもたちのお母さんの話を聞いてみると、夫に対する不信感を口にする人が少なくありません。家庭での生活に非協力的だったり、その理由はいろいろでしょうが、夫婦間がうまくいっていないと、母親はゆたかな愛情を子どもに注ぎにくくなります。 自分が満たされていないから、子どもに十分な愛情をかけてあげられなくなってしまうのです。