静岡県藤枝市が仕掛ける「サッカー観戦 × 観光」、観戦客の周遊促す観光DX、その取り組みを現地で取材した
地域とクラブをつなげる明確な役割分担
このプロジェクトの2つ目のカギは、地域の事業者向けに、LINEを活用したコミュニティプラットフォームを構築し、受入態勢の整備に取り組んでいるところだ。事業者向けに、試合開始日や試合時間、チケット販売数や来場者数予測などのデータを提供する一方、事業者はLINEのプッシュ通知でタイミングに合わせたクーポンの発行や広告の展開が可能になる。 例えば、事業者に対して試合終了を知らせる通知と共に、お店の開店状況を尋ねる通知を配信。事業者がLINE上で「開店している」「空席あり」などと応えると、その状況やクーポン情報などが「ユニタビ」に反映され、プッシュ通知で試合帰りの利用者に送られる。 現在のところ、登録事業者数は飲食店を中心に約30店舗。藤枝観光協会事務局長の蒔田大氏は「街が面で観戦者を受け入れる対応をしていく」と意欲を示す。そのうえで、「藤枝のサッカーの歴史は100年。サッカーをやる人も見る人も受け入れる環境があり、文化になっている。それをまちづくりにも活かしていきたい」と話す。 登録事業者の開拓には、「一軒一軒、ドアをノックして登録をお願いしている」(蒔田氏)。それぞれ温度差はあるが、「Jリーグの観戦で来るお客さんをしっかりと拾いたいと考えている事業者は多い」という。 こうした観光協会のアプローチに、このプロジェクトの強みがある。山﨑氏は「この取り組みで一番ハマったのは、藤枝市とナビタイムの役割分担の座組が明確にできたこと」と話す。ナビタイムは情報提供の手段を用意する。自治体や観光協会は、情報提供の手段と事業者をつなげる。蒔田氏も「観光協会は地域とクラブとのスペースを埋めていく」と明快だ。 また、山﨑氏は、このプロジェクトのポイントの一つとして、事業者自らが情報を入力するところを挙げる。「ユニタビ」の混雑情報も人力で入力しているという。「観光DXでもデジタル化しすぎず、人の手をうまく使うことで、地域のプロジェクトへの参画意識が高まる」と話す。