健康のバロメーターは「声に張りがある」こと、中尾ミエが「70歳を過ぎても現役」でいるための心得とは
中尾 身体を動かすことの効果は、身をもって感じます。それをずっと続けてきたから、現在もつらさを感じずに、さらに継続できているのだなと実感しています。だから声を大にして言いたいのは、70、80になってから急に焦って始めても、手遅れというわけではないけれども、できるならば60代の身体がまだまだ動く時期から、意識的に続けていたほうがいいと思います。 和田 中尾さんは歌手ですから、今もお客さんの前でステージに立って歌われている。当然、ボイストレーニングなんかも継続されているわけですよね。
中尾 もちろん、しています。 ■「声を出す」ことが認知症の進行を遅らせる 和田 これはあくまでも経験論的なことなので、何か実証的なデータがあるわけではないけれども、私は声を出すことが認知症の進行を遅らせる1番いい方法なのではないかなと思っているんです。 私の患者に何人か詩吟をやっている方がいるんですが、その方たちは本当に認知症の進行がほとんど見られない。どこまで因果関係があるのかはわかりませんが、やはり声を出すことが大事なんだろうなと。
中尾 認知症であることは確かなんですね? 和田 もちろん。物忘れもありますし、脳も萎縮している。典型的な認知症です。けれども、詩吟をやられている方はあまり進んでいないんです。もちろん、年齢とともに衰えるわけですけれども……。そういう方は少なからずいらっしゃいますね。詩吟が特別いいのかは定かではないけれども、私はカラオケなんかを勧めたりしています。 ■声がダメになると、嚥下機能も悪くなる 中尾 健康のバロメーターは声ですよね。声に張りがなければ、元気がないのかなと思ってしまう。衰えが1番にわかりやすいところです。
和田 おっしゃるとおりですね。声がダメになってくると、物を飲み込む機能、嚥下が悪くなってきます。中尾さんの年代はともかくとして、もう少し上の年代、80代以降は誤嚥がとても多い。 中尾 私でも時々むせますよ。でも発声練習を普段からやっているおかげで、今でも音域が広がっているのです。いくつになっても鍛えていれば成果は出るんだなと実感しています。 和田 素晴らしい。 中尾 音域が広がれば、楽に歌えるようになりますね。