なぜ大谷翔平は超一流のプレーを維持できるのか…限界まで自分を追い込む「セルフブラック」の効能
■社会人になるとなぜか「ぶっつけ本番」に ところが、社会人になった途端、多くの人が「自主練」をしなくなります。一般企業で働くビジネスパーソンにとって本番は就業時間です。就業中に最大のパフォーマンスを発揮するためには、心身の健康を整えることはもちろん、準備や自主練の時間が必要なはずです。ところがほとんどの人は「ぶっつけ本番」で仕事に取り組んでいます。 2022年にパーソル総合研究所が発表した「グローバル就業実態・成長意識調査」によると、勤務先以外で学習や自己啓発などの活動を「なにも行っていない」と答えた日本人の割合は52.6%。つまり日本では5割以上の人が、仕事の時間以外には何も勉強していない、という結果が出ました。 これは諸外国と比べても圧倒的に多い割合です。同じ質問で「(勤務先以外での学習や自己啓発を)何も行っていない」と答えた人の割合は世界平均で18.0%。もっとも低いインドでは3.2%。インドでは残りの96.8%の人が、仕事の時間以外にも自己成長のために学んでいるということです。 ■1日10分が1年で60時間の差に 日本では、仕事の時間以外に自己啓発を行う人が圧倒的に少ないということは、セルフブラックの重要性を浮き彫りにしていると言いかえることができます。 休日にゴロゴロと寝だめをするだけの人と、意欲的に学ぶ時間に充てている人のパフォーマンスが同じはずはありません。1日勉強しただけ、1日サボっただけではその差は目には見えません。しかし1日10分の「自主練」が、1カ月で5時間分、1年では約60時間分もの差を生むのです。 今は昔のようにみなが等しく長時間労働をする時代でもありませんし、会社が休日の過ごし方を強制することもできません。だからこそ、セルフブラックで「自らやる」人と、何もやらない人の間に大きな差が生まれ、二極化が進んでいくのです。
■若い頃にさぼったツケは人生の後半にやってくる 「若い時の苦労は買ってでもしろ!」と言う通り、ぜひ20代、30代の方々には若いうちに仕事に没頭する経験をしてみてほしいと思います。若いときは無理が効きます。体力勝負で、多少睡眠時間が短くても仕事もできるし、その後に遊ぶこともできます。 もちろん、だからといって自社の社員に対して「寝ないで仕事しろ!」なんてことは言いませんが、私自身の仕事観や経験では、若いうちこそとことん仕事をしたほうがいい、と確信しています。 若いうちは未熟でいいのです。たくさんチャレンジして、たくさん失敗して、たくさん恥をかきながら、経験を積み、学ぶことができます。しかしここで楽に流れ、努力を放棄すると、そのツケは後からやってきます。 ■頑張りたくても頑張れない厳しい現実 「今」の姿は、過去の自分の行動の積み重ねです。今の自分に満足しているとすれば、それは過去の自分の努力の結晶です。そして、未来の自分をつくるのは、今の行動の積み重ねしかありません。今の努力を怠ったら未来はどうなるか? 想像に難くありません。 さらに厳しい現実をお伝えすると、年齢を重ねるにつれて、心身ともに無理が効かなくなります。周囲から口うるさく注意指摘を受けることもなくなります。仮に「これから頑張ろう!」と思ったとしても、そんな中で、自分で自分を律し努力を続けるのは想像以上に大変なことです。ましてや、これまで努力の習慣がなかった人はなおさらです。 だからこそ、若いうちにとことん仕事をする経験を積んでおくことが、とても大事なのです。目的意識を持って思いっきり仕事をすると、これまではただ面倒くさいだけだと思っていた作業にも面白味を感じるようになります。 不思議なことに、没頭すればするほど、仕事をすることが楽しくて仕方がないと思えるようになってきて、仕事に対する考え方もガラリと変わります。こうして身につけた仕事観は、年齢を重ねてからも大切な礎となります。 ---------- 朝倉 千恵子(あさくら・ちえこ) 新規開拓社長/「トップセールスレディ育成塾」主宰 1962年大阪生まれ。小学校教師、税理士事務所、証券ファイナンス会社などの勤務を経て、人材育成の企業に営業職として入社。営業未経験ながら、礼儀礼節を徹底した営業スタイルを確立し、3年で売上NO1、トップセールス賞を受賞。その後、自身の営業ノウハウを広く伝えるべく独立。2004年6月、株式会社新規開拓設立、同代表取締役に就任。女性の真の自立支援、社会的地位の向上を目指した、「トップセールスレディ育成塾」を主宰。開講から20年経ち、卒業生は延べ3800名を超える。これまでに著作は41冊(累計約48万部)刊行され、近著に『運を整える。』(内外出版社)がある。 ----------
新規開拓社長/「トップセールスレディ育成塾」主宰 朝倉 千恵子