子どもを厳しく叱る必要ってあるの? 児童精神科医が出した答え
どんなときに怒ってしまいそうになるか、振り返ってみてください
そうは言っても、私も怒りのまま感情的に怒鳴ってしまったことが以前はありました。でも、よくよく振り返ってみると、子どもに怒ってしまうときというのは、別のなにか(人であったり、物事)に不満があるときかもしれないと気づいたんですよね。 たとえば、私が怒ってしまいそうになるのは、スケジュールに追われているときです。急いでやらなければならない仕事や提出期限に追われているものがある状態では、怒りの沸点が低くなってしまう(怒りやすくなってしまう)ことがあります。 そのような傾向が自分にあるとわかり、あるとき、子どもに怒ってしまったあと、「さっき怒っちゃったのは、あの件をずっと先延ばしにしているからだ」というように振り返り、なるべく時間に追われないように気をつけるようにしました。以降、私はほとんど子どもを怒ったり叱ったりしません。 もちろん道路に飛び出しそうで危ないときや駐車場で走り回っているときなど、事故にあうかもしれない命が危険な場合には大きな声で注意することもあります。そのときも、怒る、叱るというより、心配だということを伝えます。 「駐車場で走り回ったら、車にひかれる危険がある。そうなったらけがをするかもしれないし、体が動かなくなるかもしれない。それはママも悲しい」ということをおだやかに伝えるだけです。 やってはいけない理由を話せば、ある程度以上の年齢の子どもは理解します。大人だって理由もなしに頭ごなしに叱られたら、納得できないと感じてしまうこともありますよね。 それでも、親も人間ですから、どうしても反射的に怒ってしまうことや、叱りたくなることもあるでしょう。 クリニックでも、「つい子どもを怒鳴ってしまうんです......」と悩んでいる親御さんもたくさんいます。私は親御さんに、もし怒鳴ってしまったら、なぜ怒ってしまったのかを振り返ってみてほしいという話をしています。 どうしてあのときの自分はあんなにカッとしてしまったんだろうと、自分なりに分析してみるのです。 先日、次女が車の中でサイダーにラムネを入れてサイダーが大噴射したときは、思わず「ちょっと、なにやってんの!」と叫んでしまいました。実験好きな次女が「どうなるのかな?」という興味から入れてみたくなったようですが、車の中がベトベトになったら虫も来ちゃうから、次からはお風呂でやろうという話をして、その場を終わらせました。 親としては勘弁してほしいと思うような出来事ではありましたが、彼女の好奇心、サイダーにラムネを入れたらすごいことになるという経験は一生ものだと思うのです。 やる前から、「やめなさい!」と叱ってしまっては、この経験は得られないのです。そういう、ちょっとした子どもの興味や好奇心からの行動の機会を奪ってはいけないと思っています。 また、親が頭の中で「車を汚してはいけない」と強く思っていると、激しく怒ってしまう場合もあると思います。大切にしている車であったりしたらなおさらです。 でも、子どもがきれいに汚さず車に乗るというのはかなり至難の業ですよね。私は汚されてもいい工夫をするのも、また子育ての楽しみのひとつだと発想の転換をして楽しんでいます。車をきれいに保つことと、子どもの好奇心をどんどん引き出すこと、どちらが大切ですか? 私の場合は「時間」ですが、「清潔」「人に迷惑をかけない」「きちんと」など、崩されると怒りやすいポイントが人それぞれあると思いますので、まずは自分の言動を振り返る習慣をつけてみてください。
精神科医さわ(児童精神科医)