不登校から“将来”をどう描くか。保護者が知っておきたい「心構え」と「選択肢」
「しなさい」ではなく「どうしたい?」「何か手伝えることある?」で自己決定を促す
進路やキャリア形成を考えるうえでは、「自己決定」が大切です。たとえ時間がかかっても自分で決めることで、当事者意識や納得感が高まります。 反対に、誰かに決められたものであれば「やらされ感」を覚えてしまいます。学校に行く・行かないも、これからの進路も決める権利を持っているのはお子さまです。保護者主導にならないように注意しましょう。子どもは保護者の顔色をうかがった選択をすることもあるため、フラットに中立であることを心がけてください。 保護者主導にならないためのコミュニケーションのポイントは、次の4つです。 ・1. 現状を共感的に傾聴して「どうしたい?」と希望を尋ねる。 ・2. 「手伝えることある?」と希望や必要な支援を聞く。 ・3. 選択肢を複数提示する。 ・4. お子さまが決めたことは尊重するスタンスを取る。 そうはいっても、理想と現実は異なるため、なかなかうまく進まないこともあるでしょう。もどかしさのあまり「~しなさい」と言いたくなることもあるかもしれません。 そうならないためには、家庭内だけで解決しようとせず、第三者機関にうまく頼ることがポイント。教育支援センターや放課後等デイサービス、就労支援といった公的サービスから民間サービスまでさまざまなサービスがあるので、遠慮せず相談してみてください。
不登校は人生で必要な時期と受け止める
不登校のお子さまに向き合う保護者のかたは、人に言えない苦しさや不安に押しつぶされそうになることもあるのではないでしょうか。そんななか、お子さまの将来を考え、この記事にたどりついていらっしゃるのは、それだけ真摯にお子さまに向き合い、がんばられているということだと思います。 不登校は問題ではないと言われても、安心できない部分もあるでしょう。感情が堂々巡りになることもあるかもしれません。 ただ、不登校を経験した子どもたちと話をしたなかで、多くの子どもが口をそろえていたのが「家の中が暗くなるのが一番嫌だった」ということでした。心が削られる思いをすることもあるなかで簡単ではないと思いますが、不登校という現象に対して、ポジティブであること、少なくともネガティブに反応しないことはやはり大切です。 時には、お子さまが暴言を吐いてきたり、無視したりすることもあるかもしれません。しかし、それは保護者を甘えられる相手と思っているからこその行動だったりもするものです。辛いことも多いと思いますが、不登校にある今は、お子さまの人生で必要な時期と受け止めて接してあげてください。また、保護者のかたの心の平穏のためにも、例示したような家庭外での相談先を見つけ、頼っていただきたいと思います。 (出典) ※1 不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)/文部科学省 ※2 高校中退者・中学校不登校生徒の「その後」と地域における支援/内閣府
プロフィール 上木原 孝伸(かみきはら たかのぶ) ベネッセの通信制サポート校 Be高等学院 学院長 教育企業で講師として17年間教壇に立ち、教科指導や教室運営に携わった後、通信制高校の開校準備から参画、同校の副校長を4年間務める。その後、発達に特性があるお子さまとそのご家庭にマッチする環境のコンサルティングサービスの責任者を務めた後、ベネッセコーポレーションに入社。Be高等学院学院長に就任。