年金は思っているよりもらえる? 2、30代が知っておきたい数字の見方 #くらしと経済
サラリーマン+専業主婦の「モデル世帯」でも、減り幅は1割に届かない見通し
年金の給付額は将来の経済状況で左右されるため、財政検証においても「高成長実現ケース」「成長型経済移行・継続ケース」「過去30年投影ケース」「1人当たりゼロ成長ケース」の4つの経済前提ケースで試算がなされた。
実質経済成長率や実質賃金上昇率が加味された4つのうち「若い世代にとって最もリアリティーがあり、参考にできるのは過去30年投影ケース、次に成長型経済移行・継続ケース」と井上さんは見ている。 「バブル崩壊後に生まれ、失われた30年を生きてきた若い世代にはあまりイメージできないかもしれませんが、実は日本は過去30年で平均プラス0.8%経済成長をしています。ただ、それが感じられないのは賃金の上昇率がOECD諸国と比べて低いままだから。実質経済成長率だけで言えば、現状のままでも成長型経済移行・継続ケースに近いですが、実質賃金上昇率などの事情も鑑みると過去30年投影ケースあたりを念頭に数字を見るのがいいと思います」
過去30年投影ケースでは、所得代替率が50.4%、成長型経済移行・継続ケースでは57.6%と打ち出された。 所得代替率とは、「夫が平均賃金で40年間働いたサラリーマン」で「妻が40年間専業主婦」の世帯(「モデル世帯」という)の年金額が、男性現役世代の平均手取り収入と比較して、どのくらいの割合かを示すものだ。以下の計算式で算出される。 (夫婦2人の基礎年金+夫の厚生年金)÷ 現役男性の平均手取り収入額=所得代替率(%) 2024年度の所得代替率は61.2%。現役世代男性の収入の6割ほどの年金が毎月給付されているのが現状だ。過去30年投影ケースで現在と33年後を比較すると、50.4%÷61.2%=0.82(82%)となり、33年後には現在から18%ほど所得代替率が下がると言える。 所得代替率が下がるのは、年金をもらう高齢者が増え、保険料を払う現役世代が減るなかで年金財政のバランスをとるためである。 これを受けて「年金の給付水準が2割減る」という報道も見られたが、注意したいのは、給付水準というのは所得代替率を指しており、年金の額ではないという点だ。 「『所得代替率及びモデル年金の将来見通し』における、過去30年投影ケースでの夫婦の年金額を見てみましょう。所得代替率は2024年度から2057年度までで約2割減ですが、夫婦の年金額は22.6万円から21.1万円へと減少幅がマイナス1.5万円にとどまっているので、もらえる額は2割どころか1割も減っていません」