続くお笑い芸人の海外進出「出演」と「活躍」の〝リアル〟な温度差 現地の人気者は「住まないと意味ない」
今年もチョコレートプラネットらが世界的なオーディション番組『ゴットタレント』に出場し注目を浴び、“海外進出”という見出しで大いに国内のメディアを賑わせた。しかし、そんな華々しい姿と、これまで海外で活動してきた、国内では必ずしも有名でない芸人たちの姿には、温度差もある。「海外で活躍する」とは実際のところ、どういうことなのか。過去の例を振り返りながら、お笑い芸人の海外進出について考える。(ライター・鈴木旭) 【写真】海外でブレーク、一人は現地事務所へ、他二人は帰国、YouTube活動 解散したザ・スリーの姿
『ゴットタレント』出演者は増加
昨今、お笑い芸人が人気オーデション番組『ゴットタレント』に出演し、国内のメディアを賑わせることが多くなった。 同番組は世界各国で放送されており、とくに2010年代中盤からジワジワと日本の芸人たちが顔を見せている。2015年に真顔のタンバリン芸で知られるゴンゾーがアジア版に出演。そのゴンゾーからの誘いで2017年に同版のシーズン2に挑戦したのがおなかを使ったパフォーマンスで知られるコンビ・ゆんぼだんぷだ。 2018年には、かねてテーブルクロス引きなどの瞬間芸を得意とし、Twitter(現・X)にアップした動画が海外でバズっていたウエスPがフランス版から声がかかり、決勝に進出。股間に布とティーカップを乗せてドローンで引っ張ったりする“危険なテーブルクロス引き”で大いに会場を沸かせた。 この反響を得て、ウエスPと同じ吉本興業の芸人が次々と『ゴットタレント』に挑戦するようになっていく。2019年にはゆりやんレトリィバァがアメリカ版に登場、昨年2023年にとにかく明るい安村がイギリス版で決勝進出、今年は安村とともにチョコレートプラネットが「TT Brothers」としてアメリカ版に出演している。 事務所は異なるが、同シーズンのアメリカ版に臨んだシューマッハは犬のお面を使った瞬間芸を披露し、日本人コメディアンとしては異例のゴールデンブザー(審査員特別賞)を獲得。国内のメディアを賑わせたことも記憶に新しい。 こうしたニュースを報じるネットメディアでは、「海外進出」との見出しをよく見かけた。しかし、『ゴットタレント』出演後、海外での継続的な活動につながっている芸人は限られる。 例えば、これまで各国の『ゴットタレント』に出演してきたとにかく明るい安村は、今年のアメリカ版の準々決勝敗退を最後に「挑戦は一区切りにしたい」と発表。 安村に密着した今年7月21日放送の『情熱大陸』(TBS系)によれば、オーディション番組への出場は優勝しなければギャラが出ないのに加えて、その都度、各会場のスタッフに音響や照明のきっかけを伝え、現地の言葉を覚えてパフォーマンスする労力もかかる。国内外での反響を考えれば、十分すぎるほどの挑戦だったとも言える。 現地に根付き、芸をローカライズさせて人気を得るには、それ以上の柔軟性とパワーが必要だろう。その意味でも、今月からアメリカを拠点とした活動を発表しているゆりやんレトリィバァは注目の存在だと言える。