【2024年ベストバイ】スタイリスト TEPPEIが今年買って良かったモノ
1950年代「ナバホ族」の民族衣装
F:最後のアイテムは民族衣装。一昨年のベストバイでは東南アジアの部族 モン族の衣装を取り入れた「アンダーカバー(UNDERCOVER)」のアイテムを紹介してくれましたが、今回は民族衣装そのものですね。 TEPPEI:アメリカ南西部に暮らす先住民族「ナバホ族」が1950年代に着ていた衣装です。ストリートウェアではないですね。 F:どこで購入したんですか? TEPPEI:オフに気の置けない友人に会うため福岡を訪れた際、友人に紹介してもらった「Are You Different」という古着屋で購入しました。小洒落たユーロ古着とかではなく、ゴリゴリのヴィンテージを中心に扱っているお店なんですが、店主の荻野さんという方が独自の審美眼でアヴァンギャルドな古着ばかりを集めて販売していて、店に入った瞬間に圧倒されましたね。「Are You Different」に限った話ではないですが、古着屋ってなかなか手に入らないレアモノだったり、値が張るアイテムを上の方に展示していることが多いじゃないですか。この民族衣装もその中の1つでした。 シルバーの重厚感もすごいですし、手作業で作っていることが伝わってくる「歪さ」が良いです。身体のラインに沿うタイトシルエットで、現代のシルバーアクセと組み合わせても力負けしない強さを備えています。 F:一目見ただけでただならぬオーラを感じますね。 TEPPEI:元々貴重なアイテムだったことは間違いないのですが、それに加えて、昨今のヴィンテージブームの影響で世界中から多くのバイヤーが殺到していて価格の高騰がすごいんだそうです。まだやろうと思えば入荷自体はできるらしいですが、仕入れ値が高すぎて、お店に並べてもとても売れない。そういった理由から、買い付ける古着屋は少なくなっているみたいです。このアイテムは、そういった価格競争に巻き込まれる前に買い付けたアイテムとのことで、相場より安く購入できました。 F:ちなみにおいくらでしたか? TEPPEI:40万円くらいだったと思います。今買おうと思ったらこれよりだいぶ出費を覚悟しないといけないみたいですよ。お店には当時のナバホ族の写真などを載せた書籍が置いてありましたが、この服を70年ほど前に着ていたナバホ族の人は、まさか自分が着ている日常着が将来、全く違う地域の人にこんな高値で取引されて、ファッションアイテムとして評価されるなんて考えもしなかったでしょうね。 F:ある種奇跡のようにも思えます。 TEPPEI:70年も昔に異国で作られた服が巡り巡って僕の手元にやってきて、愛着を持って着られている。もしかしたら遠い未来、バトンが他の人の手に渡って大切にされるのかもしれない。ファッションってどうしても資源を消費することに絡めて語られがちですけど、こうしたヴィンテージの楽しみ方は本質的な意味ですごく健全だなと思います。