「え、船じゃないの!?」 陸自の激レア「異形の巨大車両」衝撃の洋上訓練に密着! 隊員の知られざる苦労とは
蛇行すると作業が中止、どういうこと?
敷設車の海上における推進力は、車体後部にある2基のスクリューによって得られています。94式の敷設車には板状の舵はなく、タグボートなどと同じくスクリューの収められたポッドが左右に旋回することで進行方向を変えるシステムです。このスクリューポッドは、ステアリング(ハンドル)と連動するようになっているため、水上航行時もステアリングを回して進行方向を定めます。 なお、ステアリングは連動モードの切り替えが行えるようになっており、陸上での車輪ステアリングと、へん水時の車輪・スクリュー同時操作、海上でのスクリュー操作の3モードで切り替えて使用します。 航行訓練では、熟練隊員の練度維持がメインであったため、今回は敷設装置を載せない純粋な船舶操縦訓練という形でした。実際に敷設装置を搭載し、訓練用模擬地雷で投下訓練を海上で行うこともありますが、このような訓練時は、投下した水際地雷は一定時間が経った後に浮上装置が作動し、海面に浮き上がってきたところを全数回収するそうです。 航行訓練で重視している点をベテラン隊員に聞いたところ、「まずは船舶としての基本的な(他の船舶と安全に航行する)部分と、とにかく敷設(設置)ラインを正確にトレースすること」と答えてくれました。 水際地雷の投下はGPSと連動したコンピューターで制御され、設置位置に来ると自動で投下が始まります。そのため、操縦者は車のナビゲーションシステムのように示された設置経路を正確にトレースしながら操縦しなければなりません。 水際地雷原の効果を最大限に効かせるため、設置ラインは緻密に計算されて設定されます。そのため、敷設車が蛇行などをして設置ライン上から逸脱すると、GPSの位置情報を元にコンピューターが投下を停止してしまうのだとか。このため、操縦者には正確かつ繊細な操縦が求められるとのことでした。 熟練隊員は「その日の海流や風の強さ、搭載している地雷の量などで操縦感覚は常に変化します。よって、ひとつとして同じ条件はありません。とにかく数をこなして感覚を研ぎ澄ますしかないのです」と話していました。 演習場における陸上訓練は3夜4日、海上航行訓練は夜間も含め2日間にわたって行われました。こうして陸上と海上の両方に分けて行われた水際障害中隊の訓練は完了しました。
伊藤洋平(ライター・カメラマン)