原発事故被災地知るゲーム、東北大生が開発 スマホ用、実在の施設や名物登場
東北大の学生らが、東京電力福島第1原発事故で避難指示が出るなどした福島県内の12市町村を舞台にしたスマートフォンゲーム「12RPG(仮称)」の開発を進めている。実在の施設や地元の名物も登場。楽しみながら被災地の今を知ってもらい、復興を後押しする狙いだ。1月中の無料配信開始を目指している。(共同通信=加我晋二) 中心メンバーの工学部2年宮崎翔太郎(みやざき・しょうたろう)さん(20)は山口県長門市出身。原発事故はよく知らず、漠然と「もう町は元通りになっているだろう」と思っていた。 転機は2022年6月。知人に誘われ訪れた福島県浪江町の帰還困難区域で、壊れたまま放置された家屋をはじめ、時間が止まったかのように荒れ果てた光景を見て衝撃を受けた。 何か復興に貢献できないだろうか。エンターテインメントなら、これまで関心がなかった人も引きつけられるのでは―。思いついたのがゲーム開発だ。 物語は、記憶を失った主人公「カクゾウ」が浪江町で目を覚ますところから始まる。木を伐採するなど土地を開拓していくと道の駅や漁港が出現。徐々に記憶を取り戻し、自身の正体に近づいていく。ご当地B級グルメ「なみえ焼そば」や伝統的工芸品「大堀相馬焼(おおぼりそうまやき)」もアイテムとして登場する。
宮崎さんにゲーム開発の知識はなかったが、スクールに通うなどしてプログラミングを習得。東北大のほか、秋田公立美術大や早稲田大などの学生も誘い、イラスト制作やストーリー考案を計8人で分担して進めた。 まずは浪江町のステージのみ遊べる状態で配信し、随時アップデートして他の市町村を追加する予定だ。宮崎さんは「純粋にゲームを楽しんでもらい、結果的に活性化につながればいい。避難生活が続く住民の方々にも、被災地の現状を知るきっかけとなってほしい」と期待を込めた。