地域通貨で“やさしいお金”を循環していく…北海道ニセコ町のユニークなまちづくり[FRaU]
新井さんは金融機関で運用業務に携わってきた人。資本主義経済の中心に身を置く中で、持っているお金の量で強者と弱者が決まってしまう社会のあり方に疑問を持った。 「資本主義社会ってお金をコレクションするゲームで、どうしても集めたくなる。そして奪い合いが生まれる。それよりも今あるものを分かち合ったほうが幸せになれるし、社会も豊かになる。少なくとも僕はそう思っていて、それを『共感資本社会』と名づけました。ただモノやサービスをお金と交換するのではなく、人の縁や思いをのせてお金を贈り合う。共感でお金が循環する社会です」
感謝と共感、応援が循環する。 “やさしいお金”がまちを変える
2020年7月、新井さんは「共感コミュニティ通貨ユーモ」を開始。加盟店は日本全国で約200、利用者は約7400人にまで増えた。お金を通じて「ありがとう」が循環し、助け合える社会を作ろうという理念。それに賛同し、ニセコユーモの導入を決めたのが現町長の片山健也氏だった。ニセコユーモの運用が始まって約1年。
現在29の店が加盟し、住民の間でも認知が広まってきた。ふるさと納税をするとすぐにニセコユーモが付与される「ё旅納税」の仕組みも取り入れ、観光客の利用も促進している。
加盟1号店のフレンチレストラン「ジェラパタット」のオーナーシェフ・清野弘敬さんは「ニセコユーモを導入することで自分もお金のあり方を改めて考え直すきっかけになると思った」と言う。
「ニセコユーモでの決済はアプリ画面を見せてもらって金額を確認したり、ひと手間かかるのですが、そこに会話が生まれる。そのやり取りを通してニセコ町とより深くつながるきっかけが生まれたら」(清野さん)
同じく初期に導入を決めたのが羊蹄山の雪解け湧水などを使ったコスメを作り、販売する「ICOR NISEKO」や、ニセコのシンボル的な山のひとつ、ニセコアンヌプリの伏流水を使ったウイスキーやジンの製造・販売を行う「ニセコ蒸溜所」。
どちらもニセコの自然の力を借りてものづくりをする事業者だ。