「もやしはなぜ安い?」消費者の''当たり前''が、生産現場に押し付けている''無理''
もやしはなぜ、安い商品になったのか
現在は1袋(200g)30円前後で販売されることが多いもやしだが、そもそもなぜ、安い野菜として売られるようになっていったのか。林さんは、価格の推移をたどってみると、もやしが日本の経済状況に大きく影響を受けてきた様子が見えてくると指摘する。 「1990年代までは、もやしは一般的に40円ほどで販売されていました。さらに、種子の種類や栽培方法にこだわった100円のもやしも爆発的に売れていて。あの頃は、特別であることや高い値がついていることがきっかけで、商品を買いたいと思う人たちがいた。ですがその後は、日本の長引くデフレによって、もやしはどんどん安値で売られるようになっていきました。今の時代は、1円でも安く商品を買いたいという消費者がとても多いように感じています」 そのうえ林さんは、もやしが小売店にとって扱いやすい商品であったことが、廉売が常態化していった主な理由だと考える。もやしは成長時に太陽光や土を必要とせず、工場で発芽してから10日ほどで出荷できる。そのため、小売店は仕入れや販売時期の目処を立てやすい商品として、もやしを重宝するようになった。 「特にバブル崩壊後には、競合他社より1円でも安くもやしを販売して、目玉商品にしようという動きが強くなっていきました。小売店はお客さんの方を見て商売をしていますから、できるだけ安く売って、お客さんに喜んでもらおうと考えたわけです。もやし単体で利益がでなくても、お客さんが他の商品も購入すれば、最終的にはプラスになりますからね。過去には20円で仕入れたもやしを10円で販売した店舗もあって、公正取引委員会に警告されたこともありました」 日本のもやしの安さは、海外と比べるとより顕著だ。「アメリカやヨーロッパでは、通常100円ほどで販売されていますし、原料の仕入れ先である中国の生産者からは、日本のもやしがなぜこんなにも安いのかと、何度も質問を受けました。日本のもやしは、先進国と呼ばれる国々の中では、最も安いレベルになってしまっているんです」