「消えたコメ」が戻ってきたら「コメが高い!」になっていた 9月の消費者物価指数で東京23区内では前年比4割高
コメが生産者から消費者の口に入るまでにはさまざまなルートがあり、価格の決まり方も異なる。需給状況が敏感に価格に反映されるスポット市場で取引されているコメは全体の一部。JA(農業協同組合)を通じて卸売業者へと流通するルートをはじめ、中心にあるのは相対取引だ。 相対取引は一定期間、契約するケースも多く、基本的には安定した取引といえる。ところが2023年産の関東コシヒカリを例にとると、スポット市場で今春以降に価格が加速度的に上昇、それにつれて相対取引の価格も上昇したことが見て取れる。
春以降、次第に強まった品薄感は新米が出回り始めれば収まり、高騰した価格もいくぶん落ち着くと思われていた。 ところが8月、新米が出る前の端境期にタイミング悪く起きたのが、備蓄のための買い込みだった。「端境期の空中戦のまま新米に入った」(流通業者)。新米の売り物を確保しようと集荷業者は高値を示して生産者にアプローチしたのだ。 ■価格転嫁できたがコメ離れ再発懸念 この動きを受けて、各地のJAはコメを集めるために、生産者に支払う概算金(委託販売の仮渡金)の引き上げを迫られた。新米の争奪合戦による卸売業者の仕入れコスト上昇は、中食・外食業者への卸値やスーパーでの小売価格へと反映される。高値は当面続きそうだ。
生産者にとっては、輸入インフレで肥料や農機を動かす重油等の高騰が重荷となっており、高値でようやくコスト増の「価格転嫁」がかなったといえる。 一方で、過去にはコメの値段が上がると、中食・外食業者がコメを使うメニューを減らしたり、おにぎりのサイズを小さくしたりして対応したため、再びコメ離れに拍車をかけかねないとの懸念も業界には漂う。需要減が加速してコメの値段が下落に転ずれば、生産現場も含めて打撃となる。
コメの需要は一貫して減少してきた。政府はコメ余りを防ぐため、コメを作らない田んぼに補助金を支払ったり、コメを作ってもいい面積を配分したりする政策を行ってきた。現在、直接的な生産調整からは手を引いたが、補助金を通じ、間接的に生産調整を続けている。 今年、コメ不足が夏にかけて取り沙汰されると、農水省は「コメは足りている」と繰り返した。2023年産のコメの作況は平年並みで、農水省は主食用米の需要が702万トン、供給が661万トン、6月末時点で在庫が156万トンと弾いた。確かに「不足」ではなかった。