安藤優子×浜田敬子×星薫子 ノーベル平和賞受賞イランの「白い拷問」告発は他人事ではない
男女の賃金格差も人権問題
浜田敬子(以下、浜田):「イランやアフガニスタンの女性たちはかわいそうだねと日本の女性たちは思うかもしれませんが、2024年の日本のジェンダーギャップ指数順位は、146カ国中118位。政治分野は113位。イランは143位と最下位レベルですが、日本の順位だって誇れるものではありません。G7でもOECD諸国で見ても、圧倒的に低い。この10年世界の国々がジェンダー平等に向けて努力しているのに、日本は遅々として進んでいません。 たとえば大企業において男性の賃金を100とした場合に女性は50以下だというのは、これ人権問題なんですよ。先日、素材大手のAGC(旧旭硝子)の子会社で男性が大半を占める総合職だけに社宅制度を認めているのは男女雇用機会均等法の趣旨に照らして『間接差別』だと初めて認定した判決が確定したのですが、これも人権問題です。 日本の企業の方と話すと、ビジネスと人権問題はサプライチェーンにおける児童労働と強制労働の問題だと言われることがあるんですが、それだけではありません。。もちろん、それも含まれますが、男女格差、正規雇用と非正規雇用の待遇の違い、外国人労働者の問題などビジネスに関わるこれらすべて人権問題なんです。日本は人権意識が希薄なので、目の前にあることと人権問題が結びついていないんですよ」 安藤優子(以下、安藤):「本当にその通り! 人権は何か特別な権利でもなんでもなくて、私たちが普通に差別されないで生きていく自由を保障する権利。なのに日本の社会では、自分たちの生活と人権問題との間の乖離が独特に大きいと感じます。男性にだけ保障される権利なんてあるわけない。女性が規制されるなら男性も規制される。男性らしく、女性らしくというのは表裏一体で、女性が型にはめられればその裏側で男性もまた型にはめられるんですね。なのに人権意識が希薄なせいでそこに気づきがない」 浜田:「問題なのは人権意識の希薄さだけではありません。日本の女性がさまざまな差別を人権問題としてとらえて声をあげても即逮捕されることはないけれど、同調圧力や社会規範のようなものを基準にして自重せよといった圧力があります。ネット上にはミソジニー(女性や女性らしさに対する嫌悪や蔑視のこと)の空間があって声を上げると誹謗中傷にさらされもします。日本では、お上がやらなくても社会が制裁しようとするんですよね。声をあげると刑務所には入らないまでも、傷つく状況があります」