戦時中の米国での日系人強制収容「後世に」 「当事者の声」アーカイブ続ける米団体
この問題は尾を引き、1988年にロナルド・レーガン大統領が、存命の被害者全員に一律2万ドルの賠償金を支払い、大統領公式謝罪を認める法律に署名するまで至った。
「当事者の声を後世に」 非営利団体DENSHO
「米政府は祖先のルーツによって罪のない人々を収容した」「当事者の話しに耳を傾けることによって、私たちの国の抑圧と暴力によって引き起こされる痛みを多くの人に理解してもらいたい」――。
こう宣言するのは、1996年に米ワシントン州シアトルで設立された非営利団体「DENSHO(https://densho.org/)」だ。団体名は、日本語の「伝承」に由来し、強制収容の歴史を、当事者の生の声を記録・保存(アーカイブ化)することで後世に伝える活動を続けている。冒頭のクライストさんの語りも同団体が記録したものだ。 設立時から今に至るまで団体の中心となっているのは日系三世のトム・イケダ氏。団体のホームページ(HP)によると、イケダ氏の両親と祖父母は、戦時中にアイダホ州ミニドカの施設に収容された経験を持つ。 イケダ氏自身もインタビューを続けており、コンテンツも現在進行形で増えている。団体には15人が「スタッフ」として名を連ねているが、イケダ氏を含む6人が日系三世・四世、収容経験者を義理の家族に持つ者が2人、日本出身者1人、その他が6人という構成になっている。
最短ルートで得たい史料に
DENSHOは、これまでに1700時間以上のインタビューを撮影してきたという。特徴は、キーワードを検索すれば利用者が聞きたい・知りたいと感じた部分にすぐにアクセスできるようになっている点だ。
同一人物の証言であっても、話者が話しているテーマごとに切り分けて動画を視聴できる。クライストさんの動画の場合には、入所施設である「Tanforan」を検索した後、「Oral History」などを選んでいけばたどり着くことができる。さらに、上記動画を視聴する画面では、以下の基本情報が記載されている。インタビューを並べるだけでなく、長期のアーカイブ、学術・研究での活用を意識しての仕様といえる。 (1)1934年8月26日、カリフォルニア州バークレー生まれ。日系三世。戦時中はカリフォルニア州のタンフォーアンと、ユタ州のトパーズにある施設に収容された。 (2)クライストさんに対するインタビューは1時間52分を超える。しかし、DENSHOはテーマごとに24分割しており、このパートは16番目で、尺は5分46秒。 (3)収容所にいた際に「自由」について思いを馳せたことを語る場面である。 (4)インタビューが2008年6月18日にシアトルで行われた。 DENSHOではインタビュー動画以外にも当時の写真や新聞記事などの資料もアーカイブしており、同様に検索することで閲覧することができる。