拡大路線から降りることを選んだ「スナオクワハラ」、独立後10年の歩みと現在地
純度の高いものづくりで、セールや廃棄を0に
商品の型数は、以前は毎シーズン約300型作っていたところ、独立後は約50型と6分の1ほどに縮小。生産量の減少に伴い、生産背景は全て国内工場に切り替えた。売上は数十億円規模だった独立前と比べ、現在は数十分の一ほどに減少したという。桑原氏は「今は資金が限られていて数もたくさんは作れないからこそ、自分が本当にやりたいものやお客様に喜んでもらえるものを優先して作り、自然と余計なものを削ぎ落としていく形になりました。ですから、結果的にものづくりの純度が高まりましたし、より自分らしいバランスでできるようになったと感じています」と現状を肯定的に捉える。 質の良いものづくりにこだわり、純度を高めた現在のクリエイションは、長年の顧客からも支持を集めている。「昔からのお客様は、皆さんブランドとともに大人になっているので、『今のスナオクワハラのものづくりがすごく今の自分に合っている』と言ってくださって。なかには、『独立前の最後の頃のものづくりには、正直少し違和感を感じてしまっていたんです』とおっしゃる方も。そういった声を聞くと、ブランドが今の形になってよかったなと思います」(プレス担当者)。 さらに、受注生産方式を採用しコレクションの型数や生産量を削ぎ落としたことで、シーズン毎のセール販売や商品の廃棄を行わない方向にシフト。「独立前は倉庫に残った商品在庫を目にするのがとても心苦しく、一時期はそれらをリメイクして販売していたこともあったのですが、手間も時間もかかるので限界がありました」と、桑原氏は当時の葛藤について話す。 現在もシーズン毎のセールは実施していないが、最近では10年間少量ずつ蓄積されたアーカイヴアイテムを期間限定でプライスダウンし、北青山の直営店と自社オンラインショップで販売するといった取り組みもスタートした。「発売された当時は買いそびれたが欲しいと思っていた」「歴代のものを一度に見られる機会があるのは楽しい」など、顧客からも好評を得たという。