拡大路線から降りることを選んだ「スナオクワハラ」、独立後10年の歩みと現在地
エイ・ネット時代とは“正反対”な独立後の在り方
独立し「SUNAOKUWAHARA」として再始動したとき、100人以上いたブランドスタッフはわずか3人に。以来現在まで、基本的にはデザイナーの桑原氏と、プレス担当者、三宅デザイン事務所時代から共にしてきたテキスタイルデザイナーの常時3人体制でブランドを運営している。 現在は、各メンバーが元の業務に加え、経理から営業、販売、物流、生産まで全てを分担しているが、パタンナーやショップスタッフをはじめ、エイ・ネット時代にブランドに在籍していたメンバーとの関係性も継続。「ポップアップなどのイベントがあれば一緒に販売をすることもありますし、営業面や生産面でわからないことがあれば、当時担当だった元同期に相談したりもしています」(プレス担当者)。独立から10年が経った今も、長年の仲間との繋がりを維持しながらブランドを続けている。 「当時は今と正反対のことをやっていた」と桑原氏が言葉にするほど、ブランドの運営方法やビジネスの在り方も大きく変化した。以前は全国の百貨店やショッピングセンターに数十店舗あったものの、独立後は0からのスタート。店舗もなく、限られた資金の中で現実的にどうブランドを運営し商品を売るかと考えたとき、選んだ方法は「展示会を開催して直接お客様を呼び、原則受注生産で在庫を持たずに運営する」というものだった。 「今でこそ先行予約や受注生産を行うブランドは多くありますが、10年前はほとんどありませんでした。SNSもまだ今ほど普及していなかった当時は、展示会に直接来ていただくことが、お客様との繋がりを作る一番良い方法だったんです」(プレス担当者)。 その後、元々エイ・ネット時代に店舗があり顧客も多かった松屋銀座から依頼を受け、自社の展示会に加えて同店のセレクトスペースでも受注会を開催。徐々に少量の在庫を持つようにしながら、全国でのポップアップ開催や自社オンラインストアの開設など、少しずつ販路を拡大していったという。現在も、基本的には在庫をほとんど持たない受注生産方式をベースにしながら、2018年にオープンした北青山の直営店や公式オンラインストア、ポップアップ、全国の一部セレクトショップなどで商品を展開している。