1990年代に登場したマニアックなセダン3選
2.日産レパード(4代目)
希少性を販売台数ではかるなら、日産自動車の4代目レパード(96年)が思い浮かんでしまう。ボディデザインはけっして悪くない。4ドアセダンとして適度なエレガンスを感じる。 4865mmの全長をもつ余裕あるサイズのボディを、2800mmのロングホイールベースをもつシャシーに載せ、270馬力の2987cc V型6気筒エンジン搭載モデルを筆頭に、パワートレインのバリエーションも多い。 レパードは、1980年に発表された初代が、ブルーバードのようなそれまでの日産のセダンとは一線を画したパーソナル性でもって評価された。 2代目はいきなり2ドアのみでよりパーソナルカーとしての存在感を強調。ドラマ「あぶない刑事」の劇中車として3.0リッターエンジンの前期型「アルティマ」が使われたことから、いまも人気が高い。 3代目は車名が「レパードJ.フェリー」となり、いきなり4ドアでなめらかな車体へ。乗り味も快適志向へと変わった。日産社内の車種構成など、いろいろな事情があったようで、あぶない刑事でスピンターンをしていた2代目とはコンセプトが180度転換。 たとえば、トヨタは一貫して「ソアラ」を2ドアのパーソナルクーペとして開発しつづけたのと対照的。当時も日産の開発姿勢に、クルマ好きは翻弄されつづけた感がある。 4代目は「高級車の中で、一番自由でありたい」といったキャッチコピーを掲げていたが、どうやって? と、結局、セドリック/グロリアと多くのパーツを共用したモデルで、レパードでなくてはならない必然性はまったくといってもいいほど感じられなかった。 落ち着いたデザインなので、いまでも古びた印象はないが、中古車市場でもおそらく、なぜレパードを買わなくてはならないのか、という疑問に答えられないのではないか。2代目がいまも200万円超えなのに対して4代目は2ケタ万円台である。
3.ホンダインテグラSJ
ホンダのコンパクトセダンとして登場したインテグラSJ(1996年)。これもレアといえばレア。全長4450mmの車体に2620mmのホイールベースをもつシャシーの組合せ。 ホンダ車ならではの3ステージVTECエンジン(1.5リッター)搭載モデルの設定もあり、加えて、セダンとして均整のとれたプロポーションと、なめらかなボディ面は、ホンダデザインの特徴だ。 インテグラSJの成り立ちは、ホンダベルノ店対策として、2代目「シビックフェリオ」(95年)をベースに開発されたもの。目には見えないけれどフロント部分はステーションワゴン「オルティア」と共用している。 当時のホンダデザインは、今回のインテグラSJのベースになった2代目シビックフェリオ(95年)やオルティア(96年)それに「ドマーニ」(92年)をはじめ、フロントグリルの扱いに悩んでいたように見受けられる。 グリルでデザインアイデンティティを確立するメルセデス・ベンツやBMWやアウディといったドイツ車などとは対極で、申し訳程度にグリルがついているだけ。プロポーションと面づくりがデザインの命、だったのかもしれない。 はたして、インテグラSJは、マイケルJフォックスによる「カッコインテグラ」のコピーで高い人気を集めた2代目インテグラ(89年)とはまったく別もの。神通力は通じず、販売は低迷。 このクルマを街で見かけてすぐにインテグラSJと見抜けたら、クルマ好き度はたいしたもの。もっともそう聞いて、「ホントだ!」と、評価してくれるクルマ好きが隣にいればの話である。
文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)