F1ラスベガスGPは、地元住民にとっては大迷惑だった? 2年の開催に向け改善を確約「レースが全ての人のために機能しなければいけない」
ギャンブル天国ラスベガス。2023年、この街の市街地を使ったコースで、F1ラスベガスGPが初開催された。初日にはマンホールの問題などがあったものの、決勝は素晴らしい展開となり、商業的にも大成功を収めることになった。 【動画】角田裕毅とリアム・ローソンがストックカーに挑戦! その経済効果は15億ドル(約2300億円!)と推定されており、ラスベガスの歴史上もっとも多くの税収を生み出したイベントだったとも言われている。 ただその成功の大部分は、コースとなった”ラスベガス・ストリップ”の両側に林立するカジノ・ホテルとF1に還元されることになった。一方で地元住民は、代償を支払うだけになってしまったとも言われる。 F1開催に向けてラスベガスのあらゆる道路は、舗装工事を強いられた。またストリップに隣接する土地にパドックも建設した。これらの工事により、地元住民は最大で9ヵ月にもわたって、通勤時等に交通の問題を抱えることを強いられた。 中には、サーキットのコースに挟まれた土地で営業していた”不運”な企業もあった。バティスタズ・ホール・イン・ザ・ウォーターやステージドア・カジノなどがそれにあたり、彼らは共同で「事業権の不当な妨害」を理由に、約500万ドル(約7億7000万円)の損失を賠償するよう、ラスベガスGPを相手取る訴えを起こした。 バティスタズ・ホール・イン・ザ・ウォーターの共同オーナーであるトニヤ・マーキンは、2回目のラスベガスGP開催に向けた準備が始まった際、一部の地元企業は「F1のPTSD」に苦しんだとも語ったほどだった。 これらの混乱に対し、F1のオーナー企業であるリバティ・メディアのCEOであるグレッグ・マフェイは、昨年のグランプリ開催後に謝罪。2年目の開催に向けては、よりスムーズに準備を進めると約束した。 ラスベガスのマーケティング組織であるラスベガス・コンベンション&ビジターズ・オーソリティ(LVCVA)のCEO兼社長であるスティーブ・ヒルは、混乱を最小限に抑えることが、2024年のグランプリ開催に向けた最優先事項であると明言している。 「サーキットを建設し、バリケードを並べるなど、準備に8ヵ月を要した。リバティ・メディアとF1関係者は素晴らしい成果を成し遂げたが、この街にとっては大変なことだった」 「世界で最も混雑する通りのひとつでレースを開催するのは大変だ。地元のコミュニティに、繰り返しご迷惑をかけることは避けたかったし、毎年新しい舗装をするわけではないから、ご迷惑をかける必要はないと分かっていた」 「昨年、我々は多くのことを学んだ、グランプリも昨年から多くのことを学んだんだ。今年は非常にスムーズで、混乱はなかった」 2023年の初開催に向けては、地元とのコミュニケーションが不足しており、それが混乱につながったようだ。このことについては、今シーズンの開催に向け、改善されているという。 「17ヵ月でレースを開催するというところまで漕ぎ着けたのは、かなり驚くべきことだった。多くのコミュニケーションを取ったが、その過程で学ぶこともあった」 「ある週にひとつのことを考え、2週間後には『それは間違っている。変えなきゃいけない』と考えることもあった」 「最初の5ヵ月は、道路やサーキットの建設によって渋滞を引き起こした。混乱を招き、大変な作業だった。工事のプロセスは変わっていくので、それを伝えるのが難しかったんだ。通常の建設プロジェクトならば『今後2年間はここを通れません』という感じだが、我々の場合は2週間単位だった。それは、人々にとっては反応しにくいことだ」 ヒルCEOは、今年は主催者が地元住民に対してもっと配慮し、細かい情報を提供しているという。これにより、地域社会全体にとって十分な条件を満たすことを目指そうとしているようだ。 「今年は地域社会が何を期待すべきかをよりよく理解している」 そうヒルCEOは語った。 「レースは、全ての人のために機能する必要がある。企業、レースのスポンサー、リゾートのコミュニティ、そして地域社会全体のために機能する必要があるのだ。今年は、昨年よりもそのバランスに近づいていると思う」 もうひとつの批判は、経済効果の恩恵を受ける人たちが、ごく一部に限られていたということだ。しかし今年は、ラスベガスGPの決勝翌日にあたる日曜日には、サーキットに隣接するアレジアント・スタジアムで、NFLの試合が開催される予定だ。また、ダウンタウンではアデルのコンサートも予定されているという。 「昨年は街がどうなるのか、何ができるのか、誰も確信が持てなかった。そのため、レース以外の街はほとんど暗転するような形だった」 「しかし今年はレイダース(NFL)の試合があり、レイダースはレースと提携している。日曜日にはそれを補うために、ダウンタウンでコンサートのシリーズがある。アデルのラスベガスでのコンサートの最終週というわけだ。サーキットエリアの外にエンターテインメントを戻しており、これらの全てが盛り上がるはずだ。レースも盛り上がると思う」 「一般入場券が(10000枚)追加された。これは、昨年明らかになった需要に応えたモノだと思う。我々はそのことをたくさん聞いたが、実際に何かをするのは、当時は時間がなさすぎた」 「今年は、訪れる人と地元のコミュニティの双方にとって、素晴らしい体験になるはずだ」 「このことは、今後のこのレースにとって、重要なことだ」
Filip Cleeren, Mark Mann-Bryans