鳥取・若桜鉄道4月にSL試験走行 ── 地域に人を呼べるかの「社会実験」(鉄道ライター・伊原薫)
鳥取県を走る第三セクター鉄道・若桜鉄道。八東川に沿って若桜谷をゆっくり走るこの鉄道には、7年前からSLが保存されています。普段は観光の目玉として若桜駅構内を行ったり来たりしているこのSLが、このたび本線に「復帰」することとなりました。
若桜駅構内で保存されていたC12形が「本線復帰」
そのSLとは、C12形167号機。兵庫県内で保存されていたこの車両は、かつて若桜線で走っていたという縁もあり、2007年に若桜駅構内へと「お引っ越し」。同年中に整備が進められ、蒸気の代わりにコンプレッサーからの圧縮空気で走行できるようになりました。以来、同駅構内の側線で運転体験やトロッコを牽引しての乗車体験などに活躍、鉄道ファンはもとより観光客にも好評を博しています。 若桜鉄道にとって次の目標は、このSLの本線走行。しかし、これには技術面や資金面をはじめ、高いハードルがいくつもあります。そもそもこのSLは自動車でいうところの「車検」を通っていないため、「車検証」にあたる「車籍」がなく、本線を走ることができません。それでも実現のために様々な努力と知恵が積み重ねられ、今回「社会実験」という形で、ついに本線を走ることになったのです。 社会実験が行われるのは、2015年4月11日。若桜駅での記念式典を終え、午前9時半に出発した列車は、まずは先頭にディーゼル機関車、続いて客車3両、そして最後尾にSLという編成で、折り返し地点となる八東駅へ。ここでも記念セレモニーを行った後、同10時55分に発車し、いよいよSLが先頭に立って若桜駅へと向かいます。若桜駅到着は午後12時の予定で、途中の徳丸駅・丹比駅のほか、撮影スポットである第二八東川橋梁の上で各5分間停車する予定です。
「車籍」のないSLを走らせるための工夫
「車籍」のないSLが本線を走る方法、そのキーワードは「線路閉鎖」というものです。営業時間中に保線工事などを行う場合、この線路閉鎖という取り扱いを行い、列車が入ってこないようにすることで車籍のない工事用の車両や機械を走らせることが可能になります。今回の社会実験はこれを応用し、線路閉鎖をすることで「SLの形をした機械」を走行させるのです。 実際、このSLは復元整備が完了していないため、本線上を客車を引っ張って走行するだけの力はありません。そこで、反対側につないだディーゼル機関車に押してもらって(往路は引っ張ってもらって)走行するのです。また、お客さんが乗ることができない代わりに、車内には沿線の住民が作った乗客役の「かかし」が乗車するそうです。